他人の評価にゆだねず、自分が心地いいかで決めよう

鳥飼茜 30代からの恋愛 鳥飼茜さん

小学館『This!』担当編集S(以下、S) 私は、初めて顔がかっこいいと思って付き合った男性を友人に紹介したら、「顔でかくない?」と言われたことがあって。「かっこいい」の先にはそんなジャッジもあるの!? と落ち込みました。「かっこいい」じゃなくて「顔でかい」なのかって……(笑)。

鳥飼 他人の評価に少しでもゆだねてしまうと、自分の価値観って案外すぐ崩壊しちゃうんですよね。「かっこいい人が好き」というのも、「自分にとってかっこいい人」ならそれでいい。その人といて、自分が楽しいか、自分が心地いいか、で決めることは意識した方がいいですよね。

 私の知り合いの男性は、割とかっこいいのに大学を出てから途端に出会いがなくなったらしくて。それで、お見合いコンみたいなのに行ったら、「女の人が全員経済的なスペックで俺を見てくる。人として見てくれない」とか言い出したんです。

 それからは「素人の女性は怖い」と風俗嬢複数人と続けて付き合っていたんですけど、でもそれって、わざわざそれぞれの価値観ではない、スペックで見られる場所に行くからよくないのでは……とも思ったんですよ。

――結婚を意識してしまうと、「本来の好み」や「本当に好きな人」という判断基準がブレてしまって、迷うのかもしれませんね。

鳥飼 友人に、夫とケンカばっかりしてる人がいて、話を聞いていても「そんなわがままな旦那のどこがいいんだろう」と思っていたんですけど、「結局、好きだから許しちゃうんだよね」と言っていて、案外それが真理なのかもなって。

「結婚向きの人か」「いい父親になってくれるか」みたいな判断基準って実はあんまり役に立たなくて、最終的に「好きだから、しゃあないか」と許せてしまう人かどうかが、夫婦の相性なんじゃないかと思ったんですよ。

「好きだから、しゃあないか」という“かわいげ”

――結婚相手を決めるうえで、スペックや生活能力は決め手にはならないということですか?

鳥飼 「面食い」って言っちゃうとバカみたいですけど(笑)、要するに顔が好みとか、声が好きとか、触り心地がいいとか、匂いが落ち着くとか、人って結局そういう感覚に抗えないのかな、とも思うんです。

 趣味や生活の価値観が合うことも大事だけど、靴下脱ぎっぱなしにしちゃうとか、風呂から上がった後に換気扇回してくれないとか、そういうことを相性が悪いと言い出しちゃったらキリがない。

 それよりも、いいタイミングで折れてくれるとか、不満を感じよく伝えてくれるとか、お互いに「好きだから、まあしゃあないか」という“かわいげ”みたいなものを感じ合えることが相性じゃないかなと。

編集S 寝顔がかわいいと許せちゃう、みたいな?

鳥飼 そうそう。自然な振る舞いや、素直な反応が、肌に合うことのほうが重要かなって。

第3回「自尊心は恋愛以外でキープしよう」に続く

鳥飼茜
1981年、大阪府生まれ。2004年『別冊少女フレンドDXジュリエット』でデビュー。少女漫画誌を経て、現在は『BE・LOVE』(講談社)に『おんなのいえ』、『月刊モーニング・ツー』(講談社)に『先生の白い嘘』、『FEEL YOUNG』(祥伝社)に『地獄のガールフレンド』と、3誌に連載を抱えている。『おんなのいえ』は2014年に『このマンガがすごい オンナ編』で9位にランクインして注目を集めた。