自分本位な欲望のせいで、相手からの愛情が見えなくなる
「すごいもんだな。あんなに犯されたのに、ここは綺麗なままだ。痕跡ひとつ残っていない……帰ったら、ここに入れてやる」
佐知子とまた裏返して、膝をすくいあげた。猛りたつものを押し込もうとすると、佐知子がそれを押し止めた。
「ちょっと、東吾ちゃん。その前に言うべきことがあるんじゃないの?」
「感謝の言葉が欲しい? 人身御供になって願いを叶えたんだから、慰安の言葉が欲しいか? そうだろ」
心の底では、佐知子に深く感謝していた。だが、どういうわけか裏腹の態度を取っていた。
佐知子がむっとした顔をした。(中略)
「恥知らずにイキやがって。お前のようなインラン女は懲らしめてやらなくてはな」
いまだ濡れて淫口をのぞかせている恥肉に一気に埋め込んだ。(中略)
つづけざまにえぐりたてると、佐知子はくくっと顎をのけぞらせて、「ぁああぁ」と喘いだ。
(そうら、感じているじゃないか)
だがそのとき、東吾の目に映ったのは、佐知子の目尻から流れ落ちる一筋の涙だった。
ドキッとしながらも、性欲は止められなかった。かまわず打ち込むと、
「あっ……あっ……あうぅ」
佐知子はシーツを握りしめて、顎を突き上げる。だが、閉じられた目蓋の端からは光るものがとめどなくこぼれつづけていた。
(『鬼の棲む蔵』P143L10-P145L5)
しかし、東吾の落とし穴はここにありました。
「恋や愛など信じていない」と思っているからこそ、女が与えてくれている愛に気が付かず……いや、気が付きかけたというのに、自らの欲を満たすことに夢中になりすぎて、迂闊にもスルーしてしまうのです。
女の愛は減点方式だというのも知らずに――。
しかし、このボンクラ加減もまた、ドS系昭和男児の愛すべき点……というわけで、クンニしない平成派に飽きた貴女、たまにはこってりとした昭和なオヤジを味わうのはいかがでしょうか。
Text/大泉りか
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