男によって変えられていく…『私の奴隷になりなさい』(前編)

【大泉りか・官能小説から読み解く、ファムファタールのススメ】
第7回:サタミシュウ・著『私の奴隷になりなさい』(前編)

サタミシュウ 角川文庫 私の奴隷になりなさい 大泉りか numberjuan2

 彼氏ができた瞬間に、突然、趣味や服装が変わるのって決して珍しいことではありませんよね。パンツ派だったのがスカートを履くようになったり、髪を伸ばしたり。
が、“可愛くなった”“女らしくなった”で済むレベルではなく、時折、劇的ともいえる覚醒をする女性もいます。

 突如、皮ジャンに南京錠のネックレスでキメてライブハウス通いを始めたり、タイパンツに天然素材のトップスでマリファナがいかに地球に優しいかを語ってみたり……そのような、ファッションのみならず、ライフスタイルまで極端に翻って“あなた色”に染まってしまった女友達の扱いは非常に困ったものです。

 にわか知識を披露するのを、いたたまれなく思いながら半笑いで受け流したり、以前は興味があったはずのことを「ああ、もうわたしはいいかなぁ(笑)」と上から目線で言われる苛立ちを飲み込んだりする、その一方で、「○○、彼氏ができて、変わっちゃったよね」と思うこと自体が、“新しい世界”へ飛び込んでいく彼女に嫉妬し、足を引っ張っているのではないかと自問したりと、女友達を尊重するためにしなくてはいい修行が山ほど降りかかってくるからです。

 ……今回は、そんな‟男によってがらりと変わった女”がヒロインの私の奴隷になりなさい』(サタミシュウ著・角川書店)をご紹介しようと思います。