ああ、顔が近づくということは、口も近づいてくるということで。
キス、されてしまうらしい。
はっと目を覚まし、口と口の間に手のひらを差し挟み、顔を逸らした。
「ま、待って……キスはダメ! 恋人みたいで、なんかダメなの……!」
あからさまに健児が悔しそうな顔をしているが、こればっかりは仕方ないのだ。
ご主人さまはご主人さまであって、恋人ではない。
恋人は相手をいたわり、優しくするものだが、ご主人さまは相手を顎でつかっていじめるものなのだ。
「そっか……オマエは股ぐらだけほじくってもらえば満足な淫乱だもんな。恋人とか恋愛なんて邪魔なだけか。わかったよ、真子が変態ってことは」(『ツンマゾ』P77L15-P78L7)
「SMプレイに恋愛は持ち込まない」のが信条であった真子でしたが、過激なプレイを重ねれば重ねていくほどにふたりの距離は近づき、やがて互いに恋心が芽生えはじめます。
そして、真子を奴隷から恋人にするべく、健児はあるたくらみを持って遊園地へと誘い出しだすのです。
その結末、ふたりの恋の行方は本書でお読みいただくとして、やはりマゾの被虐心を満足させるご主人さまというものは、ご主人さま足りえる、それなりの人物でなくてはいけません。
“自称ドM”女に引っかかるのは、「マジ? 俺、ドSだからピッタリじゃん♪」などというくだらない男だけ。
そう考えれば、うん、悔しくない!
書名:『ツンマゾ!―ツンなお嬢様は、実はM』
著者:葉原鉄
発行:えすかれ美少女文庫
価格:¥680(+税)
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