日活社員が選ぶおすすめ作品

――他にもみなさんオススメのロマンポルノのタイトルがあったら教えてもらいたいんですが。

高木:事前に質問をいただいていたんで、女性でも観やすいものをみんなで選んでみたんですよ。今回レイトショーでクラシック作品も上映するので、興味があったら是非どうぞ!。

 まず、神代辰巳監督というロマンポルノのエース監督が撮った『一条さゆり 濡れた欲情』。伊佐山ひろ子さんが主演を務めているんですけど、これはおすすめですね。一条さゆりという実在した伝説のストリッパーがいて、伊佐山さんはその地位を狙っている後輩ストリッパー。私が登りつめてやるって野心を持ってる女性です。自由で正直で、笑える部分もあって、観ていて元気になる、気持ちがいい作品です。神代監督はフェミニストで「女性は神様」みたいなところがあるんですよ。俳優さんにも人気があり、桃井かおりさん、萩原健一さん、内田裕也さん、奥田瑛二さんなど、神代監督のためならなんでもやるっていう俳優さんがたくさんいたみたいです。

 それから、『(秘)色情めす市場』。ちょっと過激なタイトルですが、これもすごい作品ですよ。主人公は、大阪のドヤ街で体を売って暮らしているフリーの売春婦。40歳過ぎの母親も売春婦で、親子2代で売春してて、弟と三人で暮らしています。そこしか居場所のない彼女たちが、どうやって生きていくかってとうのを約80分という短い尺の中で濃密に見せていく。かっこいいですよ。西成のちょっとガラの悪い場所で、本当に「あたし買わない?」ってお客をとりながら隠し撮りで撮影したそうです。基本的にはモノクロで物語が進行するのですが、物語の中盤でパーッとカラーになる瞬間なんてほんとにたまりません。これはロマンポルノだけでなく映画史に残る傑作だと思います。

 女性が観やすい作品っていうことでいうと、相米慎二さんが監督した『ラブホテル』。相米監督もロマンポルノが好きだったそうで、自分から「撮りたい」と志願して撮った一本です。『天使のはらわた 赤い淫画』と同じ石井隆さんの脚本で、これにも村木という男と名美というファム・ファタールが出てきます。特に山口百恵さんともんたよしのりさんの挿入歌が流れるシーンは女性なら滂沱の涙になると思いますよ。一度見たら忘れられない名場面です。

 あとは、コメディにもいい作品がたくさんありますね。時代劇の『㊙女郎市場』は、ナイスバディだけどちょっと頭の弱い女郎がヒロインで、セックスって何をするのかわからないまま売られちゃう話。親友と呼ぶ牛に乗って現れたり、「寝てればいいんだよ」と言われて本当に寝ちゃったりするんです。コントみたいなんですけど、最後はホロっとしちゃうっていう。

滝口:私は谷ナオミさんが大好きなので、今回の上映作品には入ってないんですけど『花と蛇』がオススメです。谷さん演じるお金持ちの貞淑な奥様がある男に調教されるんですけど、それだけで終わらないんですよ。彼女を慕う待女が堕ちた谷さんの姿を見て哀しむと、彼女は一言「でも男の人って可愛いでしょ」って言うんです。それで谷さんは調教されたんじゃなく開花したんだっていうのがわかる。女の奥深さみたいなものが出ていてグッときますね。

西尾:私は俳優さんにも注目しながら観て欲しいです。ロマンポルノって意外に有名な俳優さんが出てるんですよ。『赫い髪の女』の石橋蓮司さんとか『嗚呼!おんなたち 猥歌』の内田裕也さんとか、男の色気が滲み出ててかっこいい。どちらも今回のレイトショーで上映します。「今活躍してる俳優さんが、こんな役をしてたんだ」って思いながら観るのも楽しいんじゃないでしょうか。

――みなさん、やっぱりロマンポルノのことになると熱が入りますね!

西尾一般作のラブストーリーってハッピーエンドのものや綺麗事で描かれるものが多いですけど、ロマンポルノってもっと自由。ラブシーン込みで男女の恋愛の本質・かかわりを描いているところがすごく面白いんです。AM読者の女性にも是非触れて欲しいですね。

☆つづく

■第1回10分に1回濡れ場があること」がルール?日活ロマンポルノが復活
■第2回女の方が強い!?現代の草食化を反映した新・ロマンポルノ
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Text/遠藤遊佐

次回は <ラストは全員燃え死ぬ!?エロを期待して観たロマンポルノの思い出>です。
ロマンポルノ―それは、いまの若い世代の方は見覚えのないモノかもしれないし、もしかしたら「手に取りづらい」と思ってしまっているかもしれない。また、官能的なのに「ヌケない」というイメージを持ってしまっているかもしれない。そんなロマンポルノが「日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」として再登場。そこで、今回はロマンポルノの魅力に迫ります。