「バイブで刺激した後だと一段と感じるだろ?」/恥辱にまみれて『楽園の罠』(9)/AM官能小説

【あらすじ】
夫との南の島への旅行で彩夏は同じホテルに滞在する駿に出会う。ミステリアスな駿に惹かれた彩夏だったかが、何度も彼に屈辱的なプレイを強要されてしまう。欲望を抑えきれない彩夏は再び彼の部屋訪れるが、目隠しされたまま両足を開いて椅子に縛り付けられ、いやらしい玩具を挿入されて、辱められてしまった。やっとの思いで椅子から解かれた彩夏はベッドで駿の愛撫を受けながら自分の求めていたものを待ち構えていたが、その時彼女の中に入ってきたのは別の男性のものだった。

幻冬舎 楽園の罠 真野朋子 AM 小説

第9回 恥辱にまみれて

「いやぁぁぁ……やめてっ」

 何者かによって、彩夏は背後から犯されていた。目隠しと、両手が縛られた状態は変わっていない。猛烈なスピードで抜き挿しを繰り返している。欲望に任せた単純な行為でテクニックのかけらもなかった。

 駿の差し金であることはまちがいないが、相手がだれかもわからずバックから責めたてられているのだ。ベッドに体を押しつけられ、しっかりと腰を抱えこまれている。
「やめて、放して……」

 湿り気を帯びた掌の感触や、息づかいなど、途中から多少の違和感があったのだが、まさか相手が入れ替わっているとは。そのための目隠しだったのだ。彩夏はすっかり駿の策にはまってしまった。

 抵抗する術がないまま、彩夏はただ腰を差し出し相手が果てるのを待った。この勢いではすぐに終わるだろうと、ベッドに顔を押しつけてひたすら時間が経つのを待っていた。
「どうだ、バイブで刺激した後だと一段と感じるだろ?」

 駿の声が近づいてきた。やっと戻ってきたのだ。
「もう、いや。こんなこと、おしまいにしてよ」

 するといきなり目隠しがはずされた。暗かったはずの部屋は照明が点けられていたので、彩夏は眩しさのあまり一瞬目を細めた。
「ハロー」

 男はいくぶんスピードを弱めながら、背後から声をかけてきた。
「ええっ、ロイなの……」

 浅黒い肌に映える真っ白な歯を見せてにやりと笑った。けさ部屋まで花束を届けてくれた従業員のロイだ。
「ロイ、早く終わりにしてよ、お願い」

 英語でも言ってみたが、彼にはほとんど通じないのだった。
「こう見えてロイはなかなかのヤリ手なんだ。すぐには終わらないぞ。ほら、もっとよく見せてごらん」

 駿はロイに何かジェスチャーで伝えた。
「おお、いいぞ。繫ぎ目まで見えてる。いい眺めだよ」

 ロイが少し体を引いたので、密着していた彩夏のヒップと彼の下腹に隙間ができたのだ。しっかりと貫かれている部分が明るいライトの下で照らされた。
「……こんなひどいこと、いつまでさせるの」
「いつまで? 君が望むかぎりだよ。こんな恥ずかしいことされるの、実は君自身が望んでいるってことに、まだ気づいてないの?」

 駿は事もなげに言い放った。

 これが私が望みだっていうの? こんな格好で、これほど蔑まれ、恥辱にまみれているというのに。

「ち、ちがう……」
「ちがうもんか。はっきり言って君はね、ドMなんだ」

 青天の霹靂、というのはこのことなのか。彩夏はその一言で急に頭の中が真っ白になってしまった。

 私がドMですって? 何を言っているの。絶対にそんなはずはない、あり得ない……と思いながら必死で頭を振った。
「今まで言われたことないの? 俺はすぐに気づいたけどね、はははっ」

 乾いた笑い声が響いた。

 嘘よ、そんなこと。そうやって私を虐めているだけよ。

 ロイは再びエンジンがかかったようにピッチをあげてきた。まるでさかりのついた雄猿だ。
「すごいな、ロイ。そんなに速く動かしたら、俺なら腰が抜ける」

 そんなからかいも彼には通じていない。彩夏の耳元でハアハアと息を切らせ少しだけ休憩してはまた同じ動作を再開する、という動作を繰り返している。
「さてと、そろそろ俺も仲間に入ろうかな」

 駿がゆっくりと近づいてきた。いよいよ選手交替かと思ったが、彼はローブの前を開けて彩夏のすぐ横に立ったのだ。
「同時にっていうのは経験ないだろう」

 まだ半分柔らかさの残っている肉塊が、彩夏の顔に押しつけられた。頬のあたりに湿って生あたたかい先端が触れた。

 後ろから責められながら同時に口でも、ということなのか。前と後ろでふたりの相手をさせられる彩夏はまるで性奴隷だ。こんな屈辱は生まれて初めてだ。

 けれども駿には逆らえず、結局は従ってしまうのだから不思議だ。最初は抵抗があってもなぜか受け入れてしまう。たとえそれがどんなに破廉恥なことでも、だ。
「うっ、うぐぐぐ……」

 バックでロイを受け入れながら、同時に口では駿に奉仕する……こんなに虐げられてもなお、彩夏は今まで経験したことがないほど興奮していた。口の中ですっかり膨れ上がったモノを必死で咥えながら、背後からの振動にも耐え続けていた。
「お前、涙浮かべているのか。そんなにうれしいか、よしよし……」

 駿が面白がって言った。涙が出てきたのはあまりにも息が苦しいからだ。決して自分を憐れんでいるわけではない。

 そんなにうれしいか? と訊かれたが、彩夏にはよくわからなかった。思ったほど嫌ではなかった、というのが適切かもしれない。いや、もっと正確に言えば、想像よりもよかった、と表現すべきだろうか。

 頭が混乱していて、自分の置かれた状況をよく把握できていなかった。ふたりの男のそれぞれの性器を同時に受け入れる……そんなことが可能だということも、彩夏は今まで気づかなかったのだ。

 夫との退屈きわまりない性交では一生かかっても経験できないことを、たった3日で知ってしまったのだ。

 ロイと駿は、申し合わせたようにほぼ同時に果てた。彩夏は縛られた格好のまま、床に倒れこんでしまった。

【つづく】

Text/真野朋子
幻冬舎×AM特別ページ