AV選びにご用心! もはや逆に観てほしい迷作

 がー、というわけで本当に最後のAVなのですが……やってしまいました。普通に考えてAVというのは年間数万本リリースされているので、すべてが名作なわけないのです。それでもこれまで素敵なAVを紹介してこれたと思います。それがどういうわけか……ああ、どういうわけか最後の最後で、もう書くしかないのではっきり書きますけど、失敗してしまいました。

 誤解のないように先に書いておきたいのですが、主演の羽月希さんという方は非常に素晴らしい、私も大好きな女優さんです。しかし、だからこそ、『黒髪清純派受付嬢はセックス依存症 某化粧品会社の受付嬢と「平日昼間に密会セックス」羽月希』は観るのが辛かった……。あまりに彼女が可哀想過ぎる……。
女性の方は怖いものみたさで、男性の方はセックスの反面教師的にむしろ観ていただきたい気持ちです。

 ラフなジーパン姿で鏡に向かってメイクをしている羽月さん。ハンディカムの持ち主である男性はねっとりとした独特の喋り方をしていて、メイク中の彼女に「可愛くなってきたね」と言ったり(失礼!)、「どれどれお尻を覗いてみようか」とジーパンの上からねちねちとちょっかいを出しています。
彼女が「ちょっと待って、さ……」と言い淀んだのが、「撮影用の衣装じゃない」と言いたかったように思えて嫌な予感がしました。どうにも本当に準備中のようなのです。メイクさんを入れないでふたりきりで撮影しているのにこの調子かと思うと、怖さすらあります。

 そもそもハンディカムのノイズがひどくて、カメラをガチャガチャ言わせながらキスをして、「あなたのこと好きになっちゃうじゃないかあ……」「乳はなんだこれ乳はあ(?)」と、単語の終わりにすべて「ん」がつく感じの喋り方で興奮しています。怖い。「はやく裸見せてよん。見さしてよ私(?)、見さしてよちゃんと、シャワーいこうよシャワー」と何がしたいのか何をさせたいのかが読めなくて怖いです。いまメイクさせたばっかりなのにもうシャワー……。

 クンニする時も息をふううっと吹きかけてから、そろそろと触って、なぜか舐めている間、「オナニーしてたのかあ、自分でオナニーしてたのかあ」と小さい声で唱えていて恐怖です。「どうだい自分のおまんこの味はぁん……」と言ってキスをしてから、また5秒くらいあそこを舐めて、「どうだい、イッちゃったおまんこはどこだぁい」と言いながら、イッてないおまんこを触っています。そしてひたすら息を吹きかける。初めて風俗に来たおじいちゃんみたいです。クリトリスを触りながら「はーーーー(溜息)、いじくってる……はーーーーーー(溜息)」と実況中継しているのも恐怖です。

 控えめに言って、だめなおじさんのだめなところを全部詰め込んだ感じでヤバいです。おじさん大好きな私でも全く擁護できそうにありません。動画を停止して悩みました。羽月さんがこの人とセックスするのを絶対に観たくない。心が死ぬ。そして私はこの連載で初めて途中で観るのを止めたのです。え? 受付嬢の要素? そんなものはありませんよ。

 ……と、見せかけて、最後の最後だけどうなっているのか確認したくて、「羽月さんがこの人に中出しとかされていませんように……」と願いながら、薄目で再生ボタンを押しました。すると驚くべきことに、なんだかちゃちいラジカセで流しているような小さく粗雑な音で女性ボーカルの激しい洋楽にあわせて、羽月さんにストリップをさせていたのです。えっっ。文句も言わず、笑いだしもせず、真面目な顔で服を脱いで見せる羽月さん。プロとしか言いようがありません。これからも大好きです。

 しかもこのストリップ、尺がそこそこ長い。何かしらの表現なのか、右へ左へうねうねと動くカメラワークが何かを訴えているようで胸焼けがしました。

 これ……これで最終回なのに、この感じ!!! なにこれ!!! はーーーーーーーーー(溜息)失敗した……はーーーーーー(溜息)。

 えー、そして来週の土曜日からはまた趣を変えた連載でお目にかかります。おやすみなさい。これからの人生にたくさんの素敵なAVとの出会いがありますように。
いっそ観てみよう
Text/姫乃たま