
会社員だった時に毎週金曜日、一緒にドライブをする相手がいた。大学職員の神庭さん(男)だが、23時頃にJR国立駅にある彼の家へ行き、そこから彼の車で多摩地域の様々な場所を運転するのだ。車の窓を開け、風を車内に入れて快適なひと時を過ごすのである。
最終的に午前1時30分ぐらいにファミレスに行き彼はメシを食べ、僕はビールを飲むのだが、その前に必ず神庭さんがやることがあった。それはJR町田駅まで行くことである。当時、町田駅南口には青線があったのだ。「ちょんの間」という言われ方もするが、ようするに売春窟である。
このエリアには怪しいピンクのライトが店内に灯る居酒屋的な店が多数並んでおり、1階で酒を飲むように見せつつ、実際は客が来たらカーテンを閉め、2階に行ってエロをするのである。金曜日の夜、性欲に飢えた男達が多数この地に集い、どの店に入るか、選り好みをする。神庭さんは週に1回、ここに来るのを楽しみにしており、道中一人ではつまらないため会社帰りの僕を車に乗せ、話し相手にさせるのである。
そして僕は何をするかといえば、ただただ駐車場で神庭さんが帰ってくるのを待つだけである。彼は自分のお気に入りの女性がいる店を見つけるべく、くまなくこれらの店を見て、一周し終えた後、その中でNo.1と自分が目した店に入る。確か20分8000円だったと思うのだが、事前の斥候と行為を合わせて30分で終わる。
ある日の彼は様相が違った
彼が車に戻ってからは特にその話をするでもなく、そのままファミレスに行くのだが、とある日は様相が違った。
「ニノミヤ君、あのさ、最初に一周回った時にいたコが、僕が戻った時はもう客を入れていたので、二番目に気に入ったコのところに行ったんだよ。でも、その一番のコが今は空いている! ちょっとゴメン、もう一軒行ってくるね」
こう言った。神庭さんはまったくモテず、女性と触れ合うにはこのような場所でカネを払うしかないのは自身も理解していた。僕自身は当連載でも散々書いているように、カネを払ってエロをするという行為は皆無なため、彼がなぜそこまでしてエロをしたいのかは分からなかったのだが、その「一番のコ」を相当気に入ってしまったのだろう。
そして25分後、神庭さんが車に戻ってきたが、いつもと様子が違う。普段は淡々として「じゃあ、ファミレス行きますかー」なんて言うのだが、この時ばかりは一番のお気に入りのコと本懐を遂げたということで、興奮していた。
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