他人のエロに畏怖し、「こいつらには勝てない」と大学生時代に思った/中川淳一郎

大学生の頃、「こいつらには勝てない」と思ったことがある。それは性に関することだった。とはいっても、カネが介在する性、つまり風俗経験だ。今、風俗店といえばデリヘルやらソープランド、イメクラなど多岐にわたるが、当時はピンサロが大人気だった。30分5000円ほどのため、大学生が行く風俗店としては財布に優しかったのである。

同級生は立川のピンサロ・Xがいいだの、国分寺のYがいいだの、いやいや、新宿まで遠征するのがいい、などと情報交換をしていた。当時はインターネットが普及する前だったため、口コミが主な情報源だった。今でこそ「ピンサロ」と画像検索をするとどのような場所かは分かるが、当時は彼らに聞くしかなかった。

「ピンサロって何をするところなの?」

「ニノミヤ、お前行ったことないのか? 意外だな。基本的には口で抜いてもらう場所だな。女の子は上半身裸でおっぱいを揉むことはできる。ただ喋るだけというヤツも時々いるらしい」

「30分5000円ってのはなんでソープランドよりも激安価格なの? ソープは3万円ぐらいすると聞いたけど」

「場所代がかからないからじゃないのか?」

「えっ? どういうこと? ベッドやシャワーがあったら広い部屋が必要だろうに」

そこで彼は「お前は何も分かってないな」という表情をし、こう続けた。

「基本的にはソファーがいくつも並んでるだけなんだよ。ソファーの上でしゃぶってもらったり女の子が膝を床につけてしゃぶってくれたりする」

「すると他の客がサービスを受けているところも見えるの?」

「うん、そう」

「お前はそれ、恥ずかしくないの?」

「もう慣れたし、男同士は目を合わせないし、他の客の様子を見ることは皆しないようにしている」