レズビアンが男性との結婚を決意した理由

 なぜ私が、いわゆる婚活をしたかという問いに改めて答えるなら「ムカついてたから」でしょうか。
ただひたすら腹が立っていました。私の婚活の動機は怒りと苛立ちでした。自分や周囲のいろんなものにムカついていて、それらにきちんと立ち向かうために、この先50年信頼して共に戦っていける同士を探そうと思ったのが婚活をはじめたきっかけでした。

 婚活をはじめた頃の私は27歳にして、日常に疲弊していました。
自己紹介で申しました通り、私は支配系の毒親育ちでレズビアン。基本的に恋愛対象は女性でした。

 一口に「恋愛対象が女性」と言っても様々なグラデーションがありますが、私は「心が恋愛として求めるのは女性、セックスは男女どっちとも出来る」という感じ。なのでよく「男とセックス出来るレズビアン」と名乗っていました。セクシャリティで言うならバイセクシュアルに分類されると思います(セクシュアリティは誰にも侵されない、あくまでも自分で決めるものだと思うのですが、往々にして「はぁ?男とセックス出来るならビアンじゃなくてバイでしょ(怒)」みたいな主張を押し付けられることがあるのです。もっと自由であれ~)。

 私の母は、私が幼少期より着る服から髪型、習い事も遊ぶ友達も進学先も好きな色さえ全て支配してきました。常に私が思い通りのリアクションをしないと泣きながらキレまくる母から、毎日のように「あんたどうせ女が好きなんでしょ!なんでママの子なのに普通じゃないの!」と電話口で泣き叫ばれる日々。

 また、セフレの不倫おじさん(この人、「不倫おじさんあるある」「セフレ牧場主あるある」を煮詰めたような存在で、文系こじらせ非モテ女子を的確に落とすスキルがありました。私のようにクソ不倫おじさんに引っかかる女子をひとりでも減らすため、いつかネタにできればと思っています)には「自分が教え、導いてあげないといけない未熟な女の子」としてナメられ、長年ひっそりと片思いをしていた女の子は男性と結婚。おまけに進行性の婦人科系疾患まで見つかり私はもうほとほと疲れ果てていました。

 自分を取り巻く状況の全て、そして自分自身にも苛立って、なんでもいいから現状を思いっきり変えたいと思っていました。

 毒親が黙り、不倫おじさんとは縁が切れ、失恋を癒し、私の病気を自分のことのように半分背負ってくれる、そんなパートナーが欲しい……そう思ったとき、天啓のように「そうだ、男性と結婚しよう。婚活しよう!」と思ったのでした。

 それは、レズビアンであり、ミサンドリー(男性嫌い)の強い私にとって天地がひっくり返るような思いつきでした。
いろんなことが同時に起こりすぎて、疲れ果ててムカつき果てた、ある意味で正気を失った状態だったからこそたどり着いた答えだったと思います。

 しかし、それは決して自らの欲求を叶えるためだけに「結婚」という制度を利用するのではなく、生きづらさを感じている私と、どこかにいる別な生きづらさを抱える誰かがお互いの得意と不得意を持ち寄り合って、少しでも楽に生きていけたら、という思いから始まるものでした。

 男性と法律婚することだけはあり得ないと思っていたけれど、別に結婚相手と必ずしも恋愛をしないといけないわけではなく、友情婚だってひとつのパートナーシップの形じゃないか、もし万が一恋愛が出来たらそれはそれで面白そうだし。

 それに私はいつも女性を好きになっては依存し、振り回され、メンがヘラってボロボロになって、まともなパートナーシップを築けたことなんてなかったじゃないか。この先50年もメンをヘラらせ続けたいのか?否!!私は男と結婚するぞ!!!

 こうして私は婚活市場へ飛び込む決意をしたのでした。
婚活がブームとして加熱しはじめたその頃、私が最初に選んだのは「婚活パーティへの参加」でした。ほぼ丸腰の私が立てた作戦とは、そしてその成果とは?!

 次回、私の婚活ノウハウを全てお教えします。