「しずんだらたいへんじゃーん!」5歳の娘がみせた才能の片鱗/山田ルイ53世(髭男爵)

何かとモヤモヤする原因は、諸々総額8万円也というお値段の高さよりも、“伝統、歴史、銀座=アルマーニ”という発想の安さだろう。

とある小学校の制服騒動、その感想である。

まあ、あれほど、

「ウチの学校は特別!」

「○○らしさとは!!」

などとお高くとまり、“ざーます感”を醸し出せば、今の御時世、人々の反発を一通り買ってしまうのも仕方がない。

仰る通り、立地や歴史など特別な背景を持ち、名門の自負、誇りがあるのだろうが、どうせなら、

「我が校の名前が刺繍されていれば、ボロ雑巾でもブランドです!」

ぐらい言い放って頂いた方が気持ちが良い。

そもそも、“公立”である。

校長自ら、学び舎に通うためのハードルを上げて胸を張るのはズレているし、何より、大人達の自己満足に巻き込まれる子供達が気の毒だ。

「ねーねー、キティちゃんのやつ、おふろにいれたらだめだよね?」

先日、風呂場の脱衣所で、娘が僕にせがんできた。

5歳の彼女にとって唯一無二のブランドと言えば、目下サンリオをおいて他には無い。

“キティちゃんのやつ”とは、水中メガネのこと。

アイカップの目尻の部分に、キティのイラストが小さくあしらわれたゴーグルで、普段は水泳教室で娘の目を保護しているが、今日はお風呂で使いたいとのこと。

“風呂をプールに見立ててワクワクする”というのは、誰しも覚えがあるミニコント。

水中メガネ姿で、僕の前にチョコンと座り、シャンプー待ちしているのには、

「洗い辛いから外しなさい!」

と流石にNGを出したが、湯船で使う分には、別段禁じる理由もない。

オッケーである。
余談だが、最近娘は、“~したらだめだよね?”と持って回った言い方をすることが多い。

「いや、駄目なのはちゃんと分かってますけどね?」

「一応確認の意味で聞くだけですよ?」

妙に、此方の顔色を窺うような物言い。

子供らしくなく、僕は嫌いである。

「も―ちゃん、そういうときは、“~して良い?”って普通に言いなさい?」

と諭すと、

「だってー、ママにおねがいすると、いっつもすごくこわいからー!」

とケタケタ笑いながら事情を話してくれた。

早くも予防線の張り方を会得しているとは……勉強になる。