金のかかる女、ぽーちゃん/旦那さまは貴族(山田ルイ53世)

娘がぽーちゃん人形を抱えている写真

子供の頃、おもちゃを買って貰えなかった。

特別、家が貧乏だった記憶もない。
親の方針だったのだろう。

その“腹いせ”・・・というのも妙な物言いになるが、自分の娘にはすこぶる甘い。
しつけの観点からは、褒められたものではないが、色々としてやりたい。
少なくとも、世間様並みには。

四歳になる我が娘。
彼女のお気に入りの一つに、赤ちゃんを摸した人形がある。
いわゆる、知育人形というやつで、通称“ぽーちゃん”。
勿論、正式名称ではない。
娘がそう呼ぶものだから、我が家では、専ら“ぽーちゃん”で統一されている。

この“ぽーちゃん”、実によく出来ている。
横にして寝かせれば、独りでに瞼が降りて、目を閉じる。
子供が触れる物という気遣いからか。
肌に使われる素材、その質感は柔らかく、優しい手触り。
何より、その表情やスタイルが、愛くるしい。
小さな子供が、夢中になるのも頷ける。

しかし、少々問題も。
この“ぽーちゃん”・・・一々、金のかかる女なのである。

ぽーちゃんの膨大な養育費

赤ちゃんなので、おむつの類は勿論、部屋着、パジャマ、お出かけ用の服など、衣装が多い。
小物類もバリエーションに富んでいる。
歯ブラシ、散髪のためのハサミ、哺乳瓶。
この哺乳瓶、ぽーちゃんの口に押し当てると、
「ゴクゴク・・・ゴクゴク・・・おいし―!」
などと、“お喋り”する。
声の出所こそ、哺乳瓶の方だが、傍目には、ぽーちゃん本人が喜んでいるようにしか見えぬ。
他にも、ドラム式洗濯機、アイロン、物干し台などの“お洗濯セット”。
ぽーちゃん専用のベビーカー、ベッドにトイレ。
極めつけは、家。
家と言っても、幼児が二人入れる程度の、小さなテント。
しかし、玄関や、インターホンなどもデザインされており、もはや、立派な一戸建て。

家まで来れば、もう打ち止めか・・・いやいや、油断は禁物。
お次は、“お風呂に一緒に入れるタイプのぽーちゃん”の登場。
勿論、脇を固める小物類も幾つか。
事態は、振り出しに戻る。
最初から、水陸両用にしてくれればいいものを。
とにかく。
何かと養育費が嵩むのである。