動物支持率の高い夫
猫がゴロゴロと甘えていたからだ。
「ページをまたいで引っ張るような話ちゃうやんけ」と言われそうだが、愛猫メイコさんは人見知り&神経質な性格で、初対面の人間に甘えるどころか、近づくことすらありえないのだ。
夫は女には俄然モテないが、動物にはモテモテの人生を歩んできたらしい。
二人で街を歩いていると、散歩中の犬がウレションする勢いで夫に飛びかかってきたりする。
花鳥園に行った時はオオハシが肩にとまっていたし、六甲山牧場に行った時は牛が周りに集まってきた。
そのたびに周りの人から「見て、あの人!」と注目を浴びて、私は「こいつは聖☆おにいさんか?」と不思議に思っていた。
義母の証言によると、夫は4歳の時、箕面(みのう)の滝で猿に拉致されかけたらしい。
なんでも一匹の猿が夫と手をつないで、トコトコと歩いていったという。義母が奪還しなければ、今ごろ彼は猿界で育っていたかもしれない。
幼少期から動物支持率の高かった夫だが、本人も大の動物好きで「大きくなったら恐竜になりたいが、それが無理なら動物園の飼育員になりたい」と希望していたそうだ。
そんな夫は台風の日に側溝で溺れていた子猫を救出したり、マンションの共有スペースに閉じ込められた猫を救出したりと、猫界にもわりと貢献している。
結婚後、我々は里親ボランティアで雄の子猫を引き取った。
子猫は我が家についてケージから出るなり、スタスタと夫に歩み寄りヒザの上で丸まって、ボランティアさんからも「おお~~っ!」と歓声が上がった。
ラーメンマンと命名した子猫は毎晩、夫の顔の上で寝ていて、朝起きると夫の顔は山賊のように毛まみれだった。そして体重10キロの超大型キャットに成長した現在も、夫にくっついて寝ている。
ラーメンマンがやってきた時、夫は「メイちゃんが寂しがるといけないから、俺は今まで以上にメイちゃんをかわいがる」と言っていた。夫に目一杯かわいがられたメイコさんは、その3年後の初夏に15年の猫生を終えた。