もしも夫が浮気をしたら

 たぶん「えっ、どうやって?」と聞くと思う。まるで想像がつかないからだ。

交際当時も「いい加減、セックスしようぜ!」と迫る私に「まだ早すぎない?」と夫はやり渋り、「絶対大切にするから」と説得してやらせてもらった。

そんな夫から「好みの女がいたので口説いた」と言われるより、「転んだ拍子にうっかり穴に棒が入った」と言われる方が「そういうこともあるかもな」と納得する気がする。

まるで想像がつかないが、もし夫が出来心で浮気をしても、体だけの関係だったら許すと思う。もちろんショックは受けるが、別れるという結論にはならないだろう。

ただし、心の浮気はアカン。夫の中で私より大切な存在ができるのは許せない。そうなったら怒りよりも悲しみのあまり、北斗神拳究極奥義・無想転生に目覚めるだろう。

なので浮気するならセックスだけにしてほしい。まあそれも簡単には許せないと思うが。

ラオウがたんすの角に小指をぶつけて泣いていたら「お前そんなキャラちゃうやんけ!」と混乱するように、私も夫が浮気したら混乱して、信じられなくなるかもしれない。

パートナーを信じられないのは地獄だ。

「異常に嫉妬深くて恋愛がうまくいかない」と悩んでいた女友達がいる。

彼女は幼い頃から、父親の浮気に苦しむ母親を見続けたことで「男は絶対浮気する」と刷り込まれたらしい。

いくつかの辛い恋愛を経て、マジメで優しい彼氏と付き合った時も「それでも妄想が止まらない」と悩んでいた。

優しい彼氏は彼女を不安にさせないため「男友達と飲んでるよ!」と写メ付きのメールを送ってくれたのだが、「この後、街を歩いてたら『婚活パーティーの人数が足りない』と勧誘されて、優しい彼はつい押し負けて、パーティーで参加者の女にグイグイ迫られて、優しい彼は『わかった、結婚しよう』とつい押し負けて…」みたいな妄想絵巻が広がり、彼から電話がかかってくると「もう別れる!」と号泣したそうだ。

そこで彼氏は「わかった、結婚しよう」とプロポーズしてくれたという。「結婚して一緒に住めば、多少は不安が減るでしょう」と。

その話を聞いて「なんといういたわりと友愛じゃ…」と全アルテイシアが涙した。

そんな彼女も結婚10年目のJJ(熟女)となり「懐かしいな~、妄想をつづった電波ブログでも書けばよかった」と振り返っている。

心から信じられる相手と結婚して、父親の浮気の呪いが解けてよかった。そして彼女の過去の苦しみを思うたび「墓場まで持っていけないなら浮気をするな」と思う。

故・岡本敏子さんが「フランス人は浮気したら教会に行って『浮気しちゃいました、神様ごめんなさい!』と謝って、また浮気しにいく」という話をされていた。

フランス人ってメンタル強えなと思うが、たしかに神様は「ちょっと聞いてよ、この前イボンヌから聞いたんだけどさ~!」とぺらぺらしゃべったりしない。

浮気に限らず、人間、生きていれば秘密の1つや2つはあるだろう。

夫婦間で隠し事があるのが悪いとは思わないし、何もかもオープンにすべきとも思わない。ただし、絶対に隠したい秘密は絶対に隠し通すべきだ。

どうしても誰かに話したければ、神様か犬や猫に話せばいい。オウムやヨウムは言葉が話せるのでやめておこう。

ブラジャーをつけたい男性は、妻にバレない場所で。そしてパンツをかぶっても、写真は撮るなという話である。

Text/アルテイシア
※2017年10月3日に「TOFUFU」で掲載しました

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