新刊『アルテイシアの夜の女子会』のアマゾンレビューに「あふれるような性欲が加齢によって衰えていくのがよくわかり、その衰えによって生きるのがどんどん楽になっていくのが読んでいて爽快です」とあって「その通り!!!」と首をフルスイングした。
若い頃は性欲に振り回されていた。
「恋!そのすてきな好奇心がアルテイシアを行動させたッ!」とばかりに、男に会いたくて夜中に家を飛び出したりしたが、あれは恋ではなく性欲だった。テストステロンの太鼓の音がドンドコ鳴り響くのを「これぞ恋ッ…!」と錯覚していたのだ。
かつての私はタッパに入れておすそ分けしたいぐらい、性欲があり余っていた。それが今では逆さに釣るしても数滴しか出てこない。
オナニーの回数も激減した。昔は新聞配達のように朝夕2回とかしていたが、今では週に1回程度だ。ちなみに、もともと性欲薄夫の夫は月に1~2回しかしないらしい。
「精液をためすぎると前立腺がんのリスクが高まると聞くから、もうちょっとオナニーしなさいよ」と言うと「そもそももう勃たない、オナニーも半勃ちでやってる」と返された。半勃ちでも射精は可能、という知見を得た。
オナニーに対する熱量も減った。昔はオカズやグッズに凝ったりしたが、今はテキトーな動画を見てサッと抜く時短オナニー専門だ。
それに伴い、ラブグッズの断捨離も行った。使用済みバイブを母校のバザーとかに出すわけにいかないので、プラスチックゴミに出した。来世は立派な建築資材等に生まれ変わってほしい。
性欲の減少によって、男に興味もなくなった。以前は好みのゴリマッチョを見かけると「ウホッ、いい男!」と反応したが、今では男がレーダーに映らない。なので「夫以外の男とチョメチョメしたい」という人妻の煩悩を抱えずにすむ。
そんな日常は穏やかで平和だ。この心理は煙草をやめた人に似ていると思う。
吸いたい欲求があると、吸えない状況だとイライラしたり、煙草のことしか考えられなくなったりと振り回される。
一方、そもそも吸いたい欲求がなければ、煙草がなくても平気だ。吸えないストレスに苦しんだり、健康リスクや周囲への影響を気にしたりせずにすむ。
つまり性欲の衰えとは、解放なのだ。その自由と気楽さを実感する私は「いや~加齢って、本当にいいものですね!」とJJ(熟女)ライフを満喫している。
元ズベ公は声を大にして言いたい。
セックスしなくても平気な人に「セックスしろ」と言うのは、煙草を吸いたくない人に「吸ってみなよ」「吸ったらわかるよ」「この喜びを知らないなんてもったいない」と勧めるようなもので、余計なお世話ofお世話だと。
「人はセックスしたい生き物」と語る人間がいるが「俺は」と一人称を用いるべきだ。そういうお節介な輩には、タッパに炭疽菌とか詰めておすそ分けするといいだろう。