ローンの落とし穴
そして、銀行は何をもってフリーを「信用」するかというと、毎月の出入金がどれだけフラットに安定しているか、という点らしいのです。はい無理〜。
だってクライアントや案件によってギャラなんてまちまちだし、バジェット受け(総予算で受けて自分のギャラを引いたものはすべて支払いに回る)をしている月としていない月があった場合、当然入金額は山あり谷ありになります。
極端な話、1万円で受ける仕事もあれば1千万円で受ける仕事もあるのがフリーエディター。
しかしそれは「カタギ」の世界では通用しないのです。
ある銀行員には、「奥様のような働き方をしている方よりも、手取り12万円のOLさんの方に我々はお金を貸します」とハッキリ言われました。自分の生き方を面と向かって全否定されるって、なかなかない経験ですよ。借金もしていない、キャッシングもしていない、税金や年金の納付にも遅れず、誰にも迷惑をかけていない…、それなのに「信用できないから金貸せない」て。
エディターとして食べていけるようになって10年、それなりに仕事の依頼もあり、ぶっちゃけ調子に乗りかけていた私の鼻は、木っ端微塵に折られたのでした。
そもそも私が無知だったのがいけないのですが、「一つの物件に対して夫と妻が別々の住宅ローンを借りて払うことはできない」というルールがあり、それがフリーの私には障壁だったのです。
夫婦揃ってフリーならまだいいんですよ。私が借りられるローンを探すとなると、いわゆる「カタギ」の人向けのものではなく芸能人やスポーツ選手などが借りるアホみたいに金利の高いローンしかありません。
彼らは稼いでいる分、5年や10年で返せてしまうので結果金利がそれほど負担にはなりません。
しかし会社員の夫(当時。現在はフリーター)が私と二人でローンを支払っていくとなると、彼は35年もかけて払うことになるのでめちゃめちゃ損をします。
たとえば3千万円の家を買うのに、一般的な住宅ローンなら35年トータルで払う金額は3千5百万円くらいですが、金利がヘビーなローンだと4千万も5千万も支払うハメになる。え、もったいな。
さらに私は無知ながら必死でローンについて勉強したところ、どうも銀行が「貸す」額と我々が「返せる」額にはギャップがあるらしい、と気づきました。え、あぶな。罠じゃん。
一般的な住宅ローンで、銀行は年収の7倍から8倍くらいまでお金を貸します。
たとえば、額面で年収500万円の会社員なら頭金を貯めてなくても(実際には不動産屋や銀行に払う手数料が物件の金額の1割ほどあるから、そのぐらいの現金は手元にないと色々ツライけど)4千万の家が買えることになります。
しかし、これは35年間ずっと健康で、ずっと年収が下がらず、趣味や家族に余計なお金がかからず、「うまいこといった」場合のみ。
ちなみに今の相場で金利固定で35年ローンを組んだ場合、この人の毎月の返済額は12万円です。毎月の手取りの3分の1以上も住居費に取られるのはキツイ。賃貸と違って修繕費や維持費も別で用意しないといけない、となると、奥様もほぼフルタイムで働いて生活費に充てないと無理。それでも子供一人ならギリいけるけど二人、三人いたら教育費で詰む。
それでもなぜ銀行が「貸す」かっていうと、住宅ローンって物件を担保にした借金だから、もしものときは回収できちゃうから。銀行からしたら払えなくなった人からは簡単に家を取り上げて換金することができるので、商売としては成り立つんです。え、こわ。こんな、「カタギ」の人でもちょっとでもバランスを崩せば詰んじゃうような怖いものに、私らフリーランスが手を出していいはずがない!