陣痛160時間!

 ああ、思えば私が出産したのはもう10年も前。
妊婦健診で子宮頸がんが見つかり(詳しい経緯はコチラから!)、妊婦でありながら癌患者になってしまった私は、壮絶なお産を経験しました。

 妊娠初期に癌の切除手術を受けたため、無事に癌の方は治って九死に一生を得たのですが、手術の後遺症で予定日になっても子宮口が開かず、陣痛がきてるのに一向に赤ちゃんが生まれない、という地獄の160時間を味わったのです。

 陣痛が160時間って聞いたことある? さまざまな難産のケースをググッても、なかなか出てこないよ。160時間て。
5分間隔の陣痛がきて病院に運ばれたのが土曜日、息子が生まれたのが金曜日だよ。さすがに最後は危ない状態になり帝王切開で引きずり出されたのですが(だったら日曜日ぐらいにそうして欲しかった!)、我ながらよく死ななかったな、と思い出すといまだに震えます。

 だから私の出産は、生の感動、というよりも死の恐怖、という記憶に塗り替えられていて、ちょっとしたトラウマなのですが、唯一救われたのが、その長い長い時間を、旦那さんができる限り寄り添ってくれたこと。

 私の意識も朦朧としていたし、旦那さんもほとんどの時間ベッド横のパイプ椅子でうたた寝していたりで(おい!)、どんな声をかけてくれたか、どんな会話をしたか、残念ながらまったく記憶にないのですが、ただ、「いてくれた」ということだけが10年経った今も私の中に残っています。

 この人、160時間、付き添ってくれた。そんでたぶん、旦那さんの中でも、こいつ、160時間、頑張ってた、って残ってると思う。

 そういうちょっとしたことが、私たちの11年間のベースになっている。
りゅうちぇるみたいにハートの絵文字を並べたストレートな言葉で愛を伝えてくれるような人ではないけれど、今日は久しぶりに自分の出産の日を思い出して、この人と結婚して良かったな、と噛みしめています。

Text/ティナ助

次回は<私は何様なんだ?「お似合い」というジャッジメントの闇>です。
話題の芸能人の結婚や交際に関する報道が続く昨今。二人の組み合わせを見て「お似合いだな」と思ったり「不釣り合い、背伸びしてる」と思ったり。でもこの「お似合いカップル」への安心感っていったいどこから来るんでしょう?そこには男女の性の非対称性がかくれていました。