選ばれる女と選ぶ男/ティナ助

専業主婦をする女性の画像 Sweet Ice Cream Photography on Unsplash

デキ婚をした彼女

私がまだ20代前半の頃。大学を卒業したものの就職活動がうまくいかず、子供の頃に思い描いていたような未来の自分とはどんどんかけ離れた人生になってしまうような気がして、でも何をどうしたら状況を変えられるのかもわからなくて、いやそもそも変えるべきなのは状況なのか自分なのかもわからなくて、とにかく焦っていた頃のことです。

友人の一人が、当時付き合っていたボーイフレンドと結婚しました。いわゆるデキ婚。まだハタチかそこらだったかな。洋服屋で働いていた彼女はまだ夢の途中で、スタイリストになりたい、という情熱を抱えたまま、それより先にママになって新しい世界に飛び込んでいったのです。

正直、ちゃんとした彼氏もいない上に、将来の明確な目標も描けてすらいなかった私は、彼女に急速に起こった色んなことにピンと来てなくて、どう声をかけていいのか、何をして一緒に過ごせばいいのかわからなくなって、なんとなく疎遠になってしまいました。
ただぼんやりと、「“あっち側”に行っちゃったのかぁ…」と思って友人がどこか遠くの世界の住人になってしまったような気になっていたのを覚えています。

それから数年が経ち、私もなんとか小さい頃から憧れていたエディターという職業の駆け出しとなって彼女と再会したのは、仕事を通じてでした。

彼女は、小学生になった子供を連れて離婚しており、えっ、しばらく会ってないうちにそんなことが!と私を驚かせたのですが、それより何より、すっかり売れっ子のスタイリストになっていたのです。私は彼女の旧姓しか知らなかったために、その頃、しょっちゅうクレジットで見かけるイケてるスタイリストの名前が、彼女と同一人物だと気づいていませんでした。

うわー、すごいな。なんかちょっと目を離したすきにこの子はなんでもやっちゃってるのに、私ときたら。当時の私はといえば、出版社の社畜としてブラックな働き方をしており、相変わらず彼氏もおらず、ただ、救いなのは、以前よりは夢に一歩近づいていて、こうして業界で活躍するスタイリストさんとお会いする機会もある、ということでした。

そんなところから、羨ましいような、眩しいような気持ちで彼女の話を聞いていたのですが、その彼女が、「専業主婦が怖い」と言うのです。え、どゆこと。