今回は厳密にはエロい話ではなく、まったくエロくないにもかかわらず、エロの主人公にさせられてしまったという奇妙な話である。これは創作ではない。本当にこんなに狂ったエロ話があるのだ。
田中は僕が入っていた大学の某サークルの1学年下だ。そのサークルは男女両方、インカレになっており、近くの女子大からも部員は多数入っていた。田中とはすぐに仲良くなり、彼は「ニノミヤさーん、オレら名コンビですよね!」などと言い、「そうだなガハハハ!」と僕も彼に同意した。
田中は初期の頃からすでにサークル内恋愛をしていた。女子大1年の川俣だ。目鼻立ちがパッチリしていて小柄な川俣は明らかに新入生の中でもっとも美人だった。だから彼女が登場した瞬間、先輩も含めてどよめいたのを覚えている。
一方、田中はまったくイケメンではないがとにかく話が上手で、学内でも人気者になっていたし、サークルでも「可愛いヤツ」認定をすぐに受けていた。彼と会ったのは4月で、その2年7ヶ月後、彼が3年、僕が4年になった11月までは本当に仲が良かった。そして彼とは縁を切った。そのときのエロ話を書いてみる。
田中からの留守番電話
すでに僕は就職先も決めていて、あとは卒論を書くような状態だったため、ゼミの同級生と釣りに行くことになっていた。早朝、母親が血相を変えて僕を起こした。田中から深夜のうちに8回も固定電話に留守番電話が入っていたのだ。
「ニノミヤ~、いるのは分かってるんだぞ! この野郎、電話に出ろ!」
そんなことを後輩である田中が言い続けている。何がなんだか分からないし、田中が発狂している心当たりもないので「オレは釣りの準備をしなくちゃいけないからとりあえず夕方、家に帰ってから対応する」と伝えた。
そして夕方、大量に釣ってきたハゼを母親に天ぷらにしてもらおうと渡したら母は「アンタ、なんてことしてくれたの!」とキレた。
「何がだよ!」と僕もキレ返した。
「アンタ、田中君の彼女を寝取ったっていうじゃない! さっき田中君が泣きながら電話してきたんだよ!」
田中の彼女といえば川俣だがこの2年7ヶ月、喋ったことはほぼない。なんでそんな人間を寝取るのだ。というわけで、僕は母に「オレがそんなことするわけねーだろ! それはどうでもいいけど、まずはコレで天ぷら作ってちょうだい」とハゼを渡してお願いをした。母はオロオロしながら「とにかく田中君に電話しなさい」と言う。
仕方ないので電話をしたら田中は電話に出た。すでに泣いている。
「ニノミヤさん、僕はあなたがこんなにヒドい男だとは思いませんでした! 僕の彼女の川俣を何度も寝取ったらしいじゃないですか! どうしてそんなことしたんですか!」
「おい、田中、お前、何言ってるんだかわからねぇよ、このバカたれ!」
「川俣が言ってました。ニノミヤさんに何度も呼び出されてヤッたと」
「ハァ? 何も知らねーよ、川俣がそれは嘘をついているだけだ。お前はいちいちそれを信じるんじゃねぇ、このアホ!」
「いや、川俣はそう訴えています!」
これは、直接会わなくては自分が間男にされてしまうと考え、田中にはこれから2時間後に彼の家の近くのデニーズに来るよう伝えた。こんなクソ状況のせいで、せっかくのハゼの天ぷらの味も分からないほどだった。
そして、2時間後に迫る修羅場については、第三者の存在が必要だと考え、田中とも仲の良い僕の同期女性・ヒロコを呼んだ。ヒロコに電話をしたところ「ねぇねぇ、ニノミヤ君、さっきね、田中と会ったけど、泣いてて、ニノミヤ君が川俣を寝取ったと言ってたよ」と言った。
「えっ、ヒロコはそれを信じるのか?」と聞いたら「うぅん、私はニノミヤ君がそんなことをするとは思わない」と言った。よって「ゴメン、今から2時間後、ヒロコもデニーズに来てくれないか? コレ、冷静な目で見られる人がいなくては収まりがつかないと思う」と伝えたらヒロコは「いいよ~」と言ってくれた。
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