32歳ですら“大人のコスプレ”が必要に
しかし、そんな壇蜜に対して「すっごくエロくていいよね!」という声がある一方、「全然エロくない。なにがいいのかわからない」という人もいます。
そしてたしかに、彼女のセックス・アピールには、妙な“ぎこちなさ”を感じてしまうのもまた事実です。
黒髪、知性を感じさせる丁寧な言葉遣い、昭和の香り色濃い退廃的なエロス、芸名を仏教用語からとる“死”と“はかなさ”のニュアンス、全体から漂う和テイスト、などなど……。
彼女が身にまとう過剰な要素の数々に、どこか「90年代の椎名林檎っぽさ」というか、もっと言ってしまえば、「無理して大人を演じてる中二病っぽさ」を感じないでしょうか。
32歳といえば、それだけで十分な大人のはずなのに、なぜでしょう、彼女はわざわざ「大人のコスプレ」をしているように見えるのです。
たとえるなら、「背伸びした吉木りさ」以上「未熟な杉本彩」未満、くらいのイメージ。
ご本人も、実際はもっとキャピキャピした感性を持っている人のような気がします。
いま、「キャピキャピ」という最高にダサいボキャブラリーが出てきた自分にもびっくりしましたが、つまりこれは裏を返せば、もはや“32歳ですら”大人のコスプレをしなければ大人を演じきれないほど、私たちの「心のロリ化」も進んでいるということではないでしょうか。
肝心のエロスの表現にしても、彼女は「こうすれば男がエロいと思ってくれるだろう」というしぐさやふるまいをするのはとても上手ですが、そこには「私がこうしたいのだ」という大人としての主体的な性欲をあまり感じません。
ものすごく語弊のあるたとえをするなら、“木嶋佳苗”とかのほうがよっぽどセックスに貪欲そうに見えます。
残念ながら今の日本では、木嶋佳苗のようなモンスターになってしまうか、少なくとも“叶恭子”レベルの女傑にならなければ、大人の女性が「オンナ」という性を主体的に使いこなすことを許されていないような気がしてしまうのです。
そんな性的にも未熟なロリ化した国で、いびつで奇形的な“セックス・シンボル”をたったひとり演じさせられている壇蜜さん。
今後、彼女のようなエージェントが次々と派遣されるのかどうかは、まだ政府からの秘密電波を受信していないのでわかりません。
Text/Fukusuke Fukuda