”マツコ”な女は嫌われる!?

Posterior to Kebab By Sebastian Frizon
©Posterior to Kebab By Sebastian Frizon

”マツコ”な女matu’ːko na onna
生息地:世界中。頭の中がノーテンキな雌雄の間に、「幸せ家族計画」の下、生まれ成育されてしまう個体が殆ど。 特徴:地頭はいい。が、それを人間関係に使用するスペックを持たないため、人格を見極める審美眼や合理的判断能力が欠落。ことごとく騙される。

 小栗旬くん主演の『岳』をうっかり観てしまい、号泣してしまったシャルル。意外にも小栗くんの背中が広くなっている(「GTO」に出ていた時はまったくもって細くてアンガールズ見たときと大して印象が変わらなかったのに)ことに乙女心をキュンとされてしまった自分を発見したときは、さすがにヤキがまわったもんだと思ったわ。

 山で遭難した人を助けるという、それ以上でもそれ以下でもない漫画原作にアリがちな映画だったんだけど、今命を助けるために氷に挟まった足を切断するとか、ロッククライミング中に亡くなった遺体は背負って降りると救助隊員の命のリスクが高くなるから落として収容するため、顔だけはつぶれないようにヘルメットを顔に固定して投げ落とすというシーンで、いろいろ唸ってしまったわ。今、何が一番重要なのか、何を捨てて何を取るべきなのか、命を懸けたリアルな「選択」は、下手な優しさやら、おセンチやら、意地なんかで誤ると命を失うからこその「智慧」。「知恵」じゃなくて「智慧」って感じ。ブッダの域ね。

 やるせなさと愛しさと切なさと心強さに涙浮かべながら、シノラーになりきって(篠原違いですぅ~グフフ)踊ってたら、ふと以前、喫煙所で当時公開されていた映画『嫌われ松子の一生』を見た職場の先輩がこうつぶやいて(ツイッターじゃないわよっ)たのを思い出したの。

 「アタシ、ああいう人(松子aka中谷美紀氏)が一番イヤ。人生の選択ことごとく間違えるタイプ。いい人のフリして誰の為にもなっていない事に気づいてない“自己満足”ていうか“事故満足”な人」。

 いつも飄々としていて、他人のことなんか気にしません的なスマートな女性だったから、突然マジ顔で毒づかれて正直焦ったわ。だって、当時まだ青かったシャルルにとってマツコは、思いやりのある哀れな女にすぎなかったから。

 でも今ならわかる。『嫌われ松子の一生』のマツコみたいに、人生の選択をことごとく間違える女の根底には、「独善的な優しさ」がある。「こうしたら優しい自分」になれるはずとか、「こういう風に言ってあげたらいい人に映るはず」とか視点が全部「自分目線」。つまり憐みを与えてあげている自分が好きなの。

 そうして下手な優しさを偽善的にふりまくことで自分も他人も奈落の底に落ちて行く。だってすべてがつまり「自分の満足」のためだから……。だからやってもいない罪をかぶったり、悪いことした人を「何か理由があったんだよね!」と許してしまったりするの。で、教え子が立派なヤ●ザになっちゃったり、彼氏がDVになっちゃったり、自分で殺人事件起こしちゃったりするの。それでも、自分の選択が間違っているとは考えない。だって「優しさ」からやったことなんだもの。

 でも、「人のため」と言っているけれど、ぜーんぶの「選択」の動機はそうすることで「愛されたい」という欲求。本当に相手のために何をするべきなのか考えていないから、結局優しさを振りまいた人間も堕落して離れて行ってひとりっぽっち。自分だけの視点で満足して、結局事故を起こす、「事故満足」な女は、自分にも他人にも最悪の選択をする。

 でも、やめられないの! なぜってすべての優しさが「こうすべき!」っていう自分の思い込みによる独善的なもので満ちているから。結局その目には、相手の姿なんて映ってない。「こうしたらこの人は幸せになるはず!」っていう盲目的な思い込みだけ。

 『岳』では、おみ足のキレイな長澤まさみ氏がマツコ的役を演じているのだけれど、観た人すべてが「バカっ!」と突っ込みたくなる行動を繰り返し、安い正義感から色んな人を窮地に追いこんで、みんながイラッとするに違いないキャラ作りに成功していて、さすが女優魂ここにありだわ。それが最終的に、自分と他人の命が懸った究極の場面で、本当に必要な「選択」を学び取ってひとまわり大きくなる、というベタベタな成長譚で、もうお涙ゲットよ。まったく、こんなベタな手にひっかかるとは落ちたものね(悔しいっ! キーーーッ)。

 ますます不幸になっていく不幸スパイラルに落ちかけている女性を見つけたら、嫌われてもいいからまずその「優しさ」の基準を見つめ直させないとって引き締めさせられたわ。

 ハッやだ、お肌の凹凸が目立ってきてる! もうっ、心引き締める前に毛孔引き締めないと! 「お肌に優しい」っていうから選んだのに、この化粧水全然役に立たないわ。
あ~~~~もう、これだから「優しさ」前面に出してる商品は嫌いなのよ!(完全にお門違いorz)

advice

「選択」に、薄っぺらい優しさや、表面上の思いやりなんて無用。本当に人のためになる選択をしたいのなら、冷静に判断することを忘れないで。