第3回:『セカンドバージン』と『きみはペット』~年下男性を愛でる女の気持ちは?~

 みんな、どう? 最近、年下男性と恋に落ちてる?
こんにちは、モテ系リア充ライターの福田フクスケです!
先日、たまたま入った居酒屋でバイト店員の女の子(本仮屋ユイカ似)に話しかけたらたちまち意気投合、夏は一緒に隅田川花火大会を見に行く約束をしちゃいました!
……さて、私が本当に「モテ系リア充ライター」かどうかは、私が今、部屋の隅っこで体育座りしながらタイピングしている事実から、うっすら察してくださいね(ドブのように濁った目つきで)!

 気を取り直して、テレビドラマ冬の時代といわれる昨今、今週も往年の恋愛ドラマをあえて見直し、勝手に深読みしていきましょう!

“女”として愛されたい『セカンドバージン』のるい

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 今回も冒頭にいきなりすぎる質問をしてしまったのにはワケがあります。
“年下男性との恋”といえば、2010年に放送された『セカンドバージン』が話題を呼んだことは、まだ記憶に新しいですよね?

 出版社の敏腕プロデューサー中村るい(鈴木京香)が、17歳も年下のエリート証券マン鈴木行(長谷川博己)と禁断の恋に落ちるというこのドラマ。
NHK制作でありながら、過激なベッドシーンや、行の妻・万理江(深田恭子)の復讐劇が徐々にエスカレートしていくドロドロの展開が注目を集め、2011年には映画化もされました。

このドラマの主人公・るいは、40代バリキャリのクールビューティー。
かつて離婚を経験してからは、恋愛するヒマも相手もいない“セカンドバージン”です。

 “男女平等”の大義名分のもとに男と肩を並べて張り合うためには、いわば“女を捨てて”仕事に打ちこまなければならない。
現在の40代、50代の女性は、“キャリアウーマンとしての幸せ”と、“女としての幸せ”のジレンマに引き裂かれた、最初の世代と言うことができるでしょう。

「母であることも、妻であることも卒業できても、女であることは卒業できないんだってば」(『セカンドバージン』第5話より)

 そんなるいが、仕事で競合する同年代の男性ではなく、業種もまったく違うずっと年下のイケメンに癒しを求め、忘れていた“女の喜び”を取り戻す、というこのドラマの設定は、同年代の女性にある種のリアリティをもって共感されたのかもしれません。

『セカンドバージン』と『きみはペット』の共通点

 ところで、「バリキャリのクールビューティーが年下男性を囲う」というこの構図、実はずっと以前に、ほかのドラマでも扱われていることにお気づきですか?
それが、2003年に放送された『きみはペット』です。

 このドラマの主人公は、東都新聞社に勤める巌谷スミレ(小雪)。
同期の中でも異例の出世を遂げた典型的なバリキャリ女子ですが、実は周囲の期待に応えようとするあまり、人前で弱音を吐けない性格。
好きな人の前でも素直になれず、2年半付き合った男からも、「強い女は疲れる」と振られてしまいます。

 ある日、マンションの前に捨てられていた謎の年下イケメン・合田武志(松本潤)を拾い、モモと名付け“ペット”として一緒に暮らすことに。
彼に対してだけは、弱みを見せて泣いたり、飾らない自分でいられることに気付いたスミレは、やがてモモと友情とも愛情ともつかない奇妙な関係に発展していくわけです。
・どちらも主人公は、バリキャリ系のクールビューティー
・仕事のために、かつて恋愛(結婚)を犠牲にしている
・仕事で“強さ”を演じなければいけない疲れを、年下男性で癒している

 このように、『セカンドバージン』と『きみはペット』には、意外にもキャラ設定の共通点が多いんです。
言われてみれば、小雪もゆくゆくは鈴木京香のような女優になっていく気がしませんか?

 ところがこの2つのドラマ、かたやドロドロの愛憎劇、かたやマンガのようなラブコメディ(実際、原作はマンガですし)と、テイストが全然違いますよね。
そして、そのテイストの違いは、年下男性の“愛し方”の違いとも言えます。

“男”を愛でて楽しむ『きみはペット』のスミレ

By db Photography  Demi-Brooke By db Photography Demi-Brooke

 『セカンドバージン』は、行が妻帯者であることもあって、2人の恋愛関係はお互いの社会的な立場をおびやかしかねない危険なもの。
それでも、るいは自分の“女”を目覚めさせてくれた行への想いを断ちきれず、泥沼の関係にハマっていきます。
劇中では、るいの女性としての内面や自意識に踏み込む描写も多く、若い女性が見ると正直“重いな…”と感じるのではないでしょうか。

 一方、『きみはペット』は、“ご主人様とペット”という関係性が象徴しているように、2人はキスも禁止なら、もちろんHなんてもってのほか。
スミレは、モモがイケメン=“性的に魅力のある対象”だということを十分認識したうえで手を出さず、“愛玩の対象”としてかわいがるだけなのです。

 それはまるで、男性が職場のかわいい後輩OLを妹のようにかわいがったり、アニメの美少女キャラに萌えたりするのとよく似ています。
そして、男性のそういった行動には、確実に“エロ目線”が込められているということを忘れてはいけません。

 つまり、“男に選んでもらう”恋愛やセックスではなく、もっと女性が主体的に“男性を愛でる”楽しみ方があったっていいじゃないか、という新時代の男女関係のありようを、『きみはペット』は描いているのです。
これは、『セカンドバージン』世代の女性には、決してできない考え方でしょう。

 そのことを示すかのように、若い世代の中には、BLややおいといわれる男性同士の恋愛やセックスを描いた小説・マンガを愛好する(そしてそれを好きだと公言する)女性が増え社会現象にもなっています。
いちいち恋愛したりセックスしたりするのではなく、単純に「男のコの体ってエロいよね(笑)」という楽しみ方を、女性が獲得したことの証ではないでしょうか。

 社会的にはさておき、性的な意味での真の男女平等は、もうすぐそこなのかもしれませんね…!?

Text/Fukusuke Fukuda