マシュマロ系ではなく、本当にマシュマロが落ちてくる
同じ人を好きになった歯痒さ。お互いにそれを感じながら、妬みをごまかし、恨みを隠しながらニコラにアプローチしていきます。フランシスには乙女心しか感じない。ヒゲと濃いマユゲも関係ない。
描写がいちいち肉感的。フランシスとニコラのすね毛たっぷりの足が触れ合うカット、言葉を要しないスローモーションのラブシーン。少女マンガの吹き出しのない演出と、BLの凸凸っぷりが一緒になって攻めてくる。
繊細な二人を両脇に抱えて寝るニコラ、なんて罪な男!
フランシスとマリーが夢中になるその説得力は、ニコラの金色の髪と通った鼻筋にある。その美形っぷりは、まるでルネサンスの彫刻です。まさに、クラブのフラッシュによって点滅するニコラに、一瞬ダビデ像のカットが挿入されるシーンがある。フランシスの目線として、全裸の像であるからこそエロティックな妄想に感じられる。
不意をつく一風変わった演出はこれだけではない。『わたしはロランス』では、主人公の感情の揺れを、滝のような水を室内に降らせることで表現していたけど、今度は頭上からマシュマロが落ちてくる。マシュマロ系じゃなくて本当に落ちてくる。なんとも可愛らしく、フランシスの憧れを表現しているのです。
三角関係を言葉でなく、映像で語る
本作はあらゆる人の、あらゆる恋愛エピソードが語られるインタビューシーンが挿入されている。
冒頭から流れるので、映画を間違えたのか焦る。正直、知らない人の知らない恋愛話を聞いても何一つ面白みを感じない。だけど、このドキュメンタリー風演出は後になってジワジワと効果をもたらしていく。
本編で語られるフランシスとマリーとニコラの恋愛も、この中の一つとして捉えられる。ただ、インタビューと違って、やはり三角関係は端から見ていると面白い。数多い恋愛紛争の中の一遍として楽しめ、インタビューの断片の中に監督の意図を探ってしまう。
繰り返されるスローモーション。幾度となく流れる「バンバン~♪」の曲。胸を貫かれたフランシスとマリーの気持ちが言葉より映像で語られる。インタビューの言葉との対比を感じ、映画というものの強みを21才の映画監督に力説されてしまう。
観終わった後は「バンバン~♪」がやたら耳にこびりついて離れません。まさに銃撃を食らってしまうのです。