愛のバランスを崩してしまった二人──『シーソー Seesaw』

シーソー Seesaw 完山京洪

 俳優として活動してきた完山京洪が初メガホンを取り、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010でSKIPシティアワードに輝いた作品です。手持ちカメラで撮影された本作品は、小さなスケールで閉鎖的過ぎるほどに密度が濃く、むらはあるものの、監督・脚本・出演を兼ね本作品でデビューを飾った完山京洪の才能の片鱗をのぞかせる作品に仕上がっています。
 完山京洪自身が主人公の男性を演じ、相手役には村上真希を抜擢。彼女は本作で映画初主演となります。魅力あふれる新人女優の素晴らしいパフォーマンスは、海外メディアからも評価が高いのも頷けます。恋愛における細かな心理描写に胸が苦しくなります。

 日本語教師の真琴(村上真希)と、俳優になる夢を諦めて就職した伸司(完山京洪)は2年前から同棲している。
 ある日、俳優として順調な道を歩んでいる友人が結婚を決めたことから、伸司は結婚を意識する。しかし、今はそれどころではなく自分のことで精一杯の真琴。甘い考えの伸司を鬱陶しく感じていた矢先、妊娠していることが発覚する。
 やがて2人は、次第にお互いの気持ちのバランスを崩していく――。

 タイトルにもなっている”シーソー”は、お互いのバランスを保たなければいけません。劇中、公園で伸司が突然シーソーを降り、真琴が尻もちをついてしまいます。まるで2人の関係を表すかのように…。
 長く連れ添うカップルでも、あることがきっかけで亀裂や歪みが生じてしまう。あなたにも、心当たりのある場面がきっとあるはず。
 あなたの乗るシーソーはバランスがとれていますか? そのバランスを確かめに、この映画を観てはいかがでしょう。

シーソー Seesaw 完山京洪

6月30日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷にてロードショー

監督・脚本:完山京洪
キャスト:村上真希、完山京洪、SoRA、岡慶悟
配給:ヴェスヴィアス
2010年/日本映画/70分
URL:完山京洪監督作品『シーソー SEESAW』

Text/Michihiro Takeuchi