朝井リョウ『何者』映画化!本当の気持ちは140字では収まらない

たけうちんぐ 何者 映画 佐藤健 有村架純 二階堂ふみ 菅田将暉 岡田将生 山田孝之 朝井リョウ 2016映画「何者」製作委員会 2012 朝井リョウ/新潮社

 自分が一体、“何者”なのか。それは面接のアピールでもSNSの自己紹介でも明かされない。自分が“何者”であるのか、きちんと説明できる人はいるだろうか。

 Twitter、Facebook、Instagramでは日々、“頑張っているアピール”が連投されている。
「~さんと打ち合わせ終了!」、「もう二日間まともに寝てない…」、「今日は先輩と呑み! 仕事について考えさせられた夜でした」
別に言わなくてもいいことが次々とスクロールされていく。同調と、嫉妬と、裏切り。ネットでの本音とリアルでの建前が入り乱れる現代において、ここまでポジティブにもネガティブにも共感してしまう作品が生まれるなんて。

 平成生まれの作家・朝井リョウの直木賞受賞作品『何者』が、『愛の渦』などで知られる演劇界の鬼才・三浦大輔によって映画化。佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生といった平成生まれの俳優・女優たちが一堂に会し、まるで本物の就活生のような“本音”がたくさん練り込まれた生々しいタッチで描かれる。

「いるいる」就活生のオンパレード

たけうちんぐ 何者 映画 佐藤健 有村架純 二階堂ふみ 菅田将暉 岡田将生 山田孝之 朝井リョウ 2016映画「何者」製作委員会 2012 朝井リョウ/新潮社

 就職活動の経験がある人なら誰もが身に覚えあるだろう。筆記試験のペンが紙を叩く音。集団ディスカッションの緊張感。仲の良い友人の内定も素直に喜べない。まるで自分が世間から認められていないような錯覚に陥る。と、生々しい心理描写が続く。
「内定」――この言葉に左右されて、人間性や社会性のすべてが決められる気がしてしまう。もちろん就活生でなくても他人事とは思えない。“自分を偽って生きる”ことにおいての悲喜交々に満ちている。

 冷静分析系男子・拓人に佐藤健、地道素直系女子・瑞月に有村架純、意識高い系女子・理香に二階堂ふみ、天真爛漫系男子・光太郎に菅田将暉、空想クリエイター系男子・隆良に岡田将生と、“平成生まれ”の等身大な俳優たちだからこそ演じられる、「いるいる」ってキャラクターばかり。そして何者にも“系”でカテゴライズする時代がしっぺ返しを食らう。人間はそんな容易く分別できない。それぞれがもがき苦しみ、その苦しみを誤魔化し、誤魔化したSNSで他人を苛立たせる。
Twitterでの誰に向けているか分からない頑張っているアピールと、それに唾を吐くように苛立つジェラシー。そんなSNSが生む“もう一つの顔”が、恋愛、友情、就活を引っ括めた大きな問題を引き起こしていく。