貧乏と病に見舞われ、それでも健気に生きる夫と妻…どこにでもいる庶民の人情と善意を描いた、オフビートながらもユーモアたっぷりの映画をご紹介します。
監督は、世界中に多くのファンがいる巨匠アキ・カウリスマキ。長編映画としては『街のあかり』以来、5年ぶりの新作になります。夫のマルセル役はアンドレ・ウィルム、妻のアルレッティ役にはカウリスマキ作品常連のカティ・オウティネン。二人が社会の片隅にひっそりと生きながらも互いを思いやる夫婦を演じ、観る人の心を揺さぶります。
かつては豊かな生活を送っていた元芸術家のマルセル(アンドレ・ウィルム)は、今はル・アーヴルの街角でしがない靴みがきをしている。家でその帰りを待つのは、献身的な妻アルレッティ(カティ・オウティネン)。
そんなある日、アルレッティが病に倒れてしまう。そして、時同じくして、アフリカの難民である少年イドリッサ(ブロンダン・ミゲル)が家に転がり込んでくる。イドリッサを母親のもとに送り出してやるため、工面しようと奮闘するマルセル。しかし、アルレッティは不治の病を宣告され、イドリッサを捜索する警視モネ(ジャン=ピエール・ダルッサン)がマルセルの身に迫ってくる――。
この映画には、お金もなくて、誰にも知られずに生きるような人々がたくさん出てきます。
マルセルとアルレッティのふたりは、貧困に加え病にも襲われ、世の中でいえば生活レベルはかなり下だと言ってもいいかもしれません。だけど、その中にある夫婦愛は、どう考えても不幸ではなく、幸せなのです。
全編が情緒にあふれて迎える、最高のハッピーエンドはずっと忘れることはできないでしょう。
アキ・カウリスマキの素朴な愛と情で作り上げられた世界観に、大切な人と一緒に触れてみてはいかが?
2012年4月28日(土)、ユーロスペースほかにて公開
監督:アキ・カウリスマキ
キャスト:アンドレ・ウィルムス、カティ・オウティネン、ジャン=ピエール・ダルッサン、ブロンダン・ミゲル、エリナ・サロ、イヴリヌ・ディディ、ゴック・ユン・グエン
配給:ユーロスペース
原題:Le Havre/2011年/フィンランド・フランス・ドイツ映画/93分
Text/Michihiro Takeuchi