日本映画界を代表する俳優陣の、ここでしか見れない“狂気”
西島秀俊が中年男と若い女のカップルをストーキングする――。これだけ見ると拍子抜けを食らうような設定だが、後半から健二の鬼気迫る表情に移り変わっていく様はスリリング。
観客は健二と秘密を共有してしまい、真相を突き止める刑事が迫ってくると健二同様に怯えてしまう。刑事を演じる新井浩文の演技が良い意味で憎たらしく、今の日本映画界を代表する俳優陣の“狂気”が揃っている。
とにかくビートたけしの存在感に圧倒される。『バトル・ロワイアル』『血と骨』『劇場版MOZU』などと強烈なキャラクターを演じてきた彼だが、今作の佐原も悪夢に出てきそうな邪悪なムードを放つ。美樹の産毛をカミソリで剃うシーンでさえ、ロリコン的な気持ち悪さを感じず、怪しげな狂気だけが鮮やかに濾過されて残るのは、彼の役者としての才能か、それともウェイン・ワン監督の手腕か。
ホテルの室内に忍び込んだ健二が、ベッドの下に隠れて佐原と美樹の言い争いを聞く場面もそう。健二から見える佐原の足元だけで、全身が凍りつきそうな緊張感を放ち、少し角度を変えるとマヌケにも恐怖にも感じさせる佐原の表情が独特。監督としてだけではなく、役者としても日本映画界で重要な存在であることを改めて知る。
結局、好奇心の行き着く先はどこにあるのだろう。女の謎めいた部分を全て解明したら、健二は次に何を探し求めるのだろうか。
俳優たちが体当たりで挑む好奇心と狂気の物語の結末を、その目で確認してみてはいかがでしょうか。
あらすじ
作家の健二(西島秀俊)は妻の綾(小山田サユリ)とともにリゾートホテルで一週間の休暇を取っていた。二人の関係は倦怠期を迎え、処女作はヒットしたもののその後スランプに陥り、就職を決めた健二は作家の人生を諦めかけていた。
そんな中、健二はプールサイドで初老の男・佐原(ビートたけし)と若くて美しい女・美樹(忽那汐里)のカップルに目を奪われる。なぜ年の離れた二人は一緒にいるのか。謎めいた存在に居ても立ってもいられず、健二は二人を尾行し、さらにはホテルの寝室に忍び込むというストーカー行為にまで及ぶことに。
やがて知る二人の真実と、目の当たりにする佐原の美樹に対する執着。そこで健二が垣間見た“狂気”とは――。
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