三谷幸喜×チェーホフで大注目!『三谷版「桜の園」』

 かつて、ある人が言いました。「おもしろい舞台は、おもしろい映画よりもおもしろい。しかし、つまらない舞台は、つまらない映画よりもつまらない」と。
 たしかに、俳優の生の演技を間近で堪能できる演劇は、素晴らしい作品に出会ったときの感動も格別です。
でも、動員できる観客数も上演期間も映画より少ないために、なかなか評判や感想を人と共有する機会がありませんよね。
もちろん、だからこそ観劇デートは、2人の貴重な共通体験を得るのにぴったりのデートプランなわけですが、チケット代も決して安くはない昨今。
どの作品を観るかで失敗したくない……というのが、ふだん舞台を観慣れない人にとっての本音ではないでしょうか。

 それでは、確実におもしろいこの春注目の話題作をご紹介しましょう。
それが、6月9日より渋谷のパルコ劇場で上演される『三谷版「桜の園」』です。
「桜の園」といえば、ロシアの劇作家チェーホフが残した四大戯曲の最後の作品。これまで著名な演出家の手によって幾度となく上演されてきた、演劇ファンなら知らない者はいない名作です。

 そして今回、その演出を手がけるのが、『王様のレストラン』『古畑任三郎』といったテレビドラマの脚本や、『有頂天ホテル』『ザ・マジックアワー』などの映画監督で知られる脚本家・演出家の三谷幸喜。
豊かな笑いとウェルメイドな作風で、万人が楽しめるエンターテインメント作品を次々と世に送り出しています。
そんな近代劇の古典的名作と、現代のヒットメーカーの異色の組み合わせが、話題を呼ばないはずがありません!

 実はこの「桜の園」という作品、「四幕の喜劇」という副題がついているにもかかわらず、その物語はとっても悲劇的。
革命前夜のロシアで、没落貴族が一族の誇りだった桜の園を失い、離散していくあわれな姿が淡々と描かれていきます。
しかも、劇中にはこれといった事件や、ドラマティックな展開はありません。
そのせいか、チェーホフの戯曲はときに難解で退屈と思われてしまうこともしばしばなのです。

 そんな作品を、稀代の喜劇作家・三谷幸喜がどう演出するのかが、今回の舞台の最大の見どころ。
ちなみに、冒頭で紹介した「ある人」の言葉とは、実は三谷さんがかつて著書の中で語っていた言葉。
そんな彼の手にかかれば、「桜の園」がなぜ喜劇なのか、なぜ名作なのかを、演劇ファン以外の一般の観客にも、わかりやすく示してくれるような舞台になるはず。

 実力派の豪華キャストが織りなす人間模様に、あなたも彼もきっと釘付け。
あとから「素敵な舞台を一緒に観たね」と思い返せるような作品になるでしょう。
時代の大きな変革期に立ち会っていながら、その変化に対応できずに右往左往する人々の滑稽な姿は、格差が広がる現代日本で生きる、私たちの姿を映し出しているかもしれませんね。

名称:三谷版「桜の園」
作:アントン・チェーホフ
翻案・演出:三谷幸喜
出演:浅丘ルリ子、市川しんぺー、神野三鈴、大和田美帆、藤井隆、青木さやか、瀬戸カトリーヌ、高木渉、迫田孝也、阿南健治、藤木孝、江幡高志
URL:https://www.parco-play.com/web/page/information/sakuranosono/

【東京公演】
日程:2012年6月9日(土)~7月8日(日)
会場:パルコ劇場(東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコ パート1・9F)
料金:全席指定9,000円 U-25チケット6,000円(当日指定席券引換、平日限定、要身分証明書、チケットぴあ・前売販売のみ取扱い)
チケット:4月22日より前売開始
問合せ:03-3477-5858(パルコ劇場)

【大阪公演】
日程:2012年7月12日(木)~7月22日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール(大阪市中央区森ノ宮中央1-17-5)
料金:全席指定9,500円
チケット:5月27日(日)より前売開始
問合せ:06-7732-8888(キョードーインフォメーション)

【横浜公演】
日程:2012年7月25日(水)~7月29日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場ホール(神奈川県横浜市中区山下町281)
料金:S席9,000円 A席6,500円 B席4,500円
U-24チケット4,500円 高校生以下1,000円 シルバー割引(65歳以上)8,500円
チケット:4月22日(日)より前売開始
問合せ:045-662-8866(チケットかながわ)

Text/Fukusuke Fukuda