売名と寄付の両立はできるのか――わたしがTシャツを売る理由

肉乃小路ニクヨ 恋愛 ニューレディー おネエ 淑女 自由 Fokeev

 ニクヨちゃんTシャツ2016というものを作って売っています。
1枚2000円で私の美しい横顔がオリンピック風金文字ロゴで囲まれている、紺色ベースのTシャツです。

 昨年私は40歳を迎えたので、40歳記念でTシャツを150枚作って、それを売り切りました。
売った過程が楽しくて、今年も作ってしまいました。
なんと今年は300枚。半分くらい売れましたがまだ半分くらい残っています。
一応赤字にはならないようにしていますが、儲けようとして作っているわけでもありません。

 Tシャツは売ってもほとんど儲からないんです。
私みたいに発注するロット(発注枚数)が少ないと原価が高いのです。
良い素材のTシャツを使い、デザインの原案を自分で考えて、ちゃんと信頼のできるデザイナーさんに頼んで作ってもらって、お礼もしています。送料などコストもかかります。利益は1枚数百円単位です。 でも、これは私にとってちょうど良い負荷の課題です。

トレーニングと市場調査

 まず最初の課題は偉そうになるのを防ぐことです。
私は今年41歳になりました。若い頃に比べるとお金もちょっとは持っているので、数百円のために頭を下げる、感謝をするという機会は減ってきます。
ヘタをすると偉そうな人になってしまうかもしれないので、買ってくれてありがとう、大切に着てやってくださいという気持ちをこめて頭を下げます。

 次の課題は直接の売買のコミュニケーションを楽しむということです。
Tシャツを売って、買ってということをすると、そこには必然的にコミュニケーションが生まれます。
元来おとなしい性質なので、お店以外では知らない人とほとんどコミュニケーションを取りませんが、売るものがあると積極的にコミュニケーションが取れます。それがとても新鮮なのです。

 このコミュニケーションの過程で市場調査や人間観察をしています。
年齢層や性別によって2000円という金額をどの程度の感覚で消費するのか?
着ている服装や顔つきなどから、どんな感じの人が私のTシャツを買ってくれるのか?
どういう話の展開だとTシャツを購入しやすいのか?
近くで購入した人がいた場合に連鎖反応は起こるのか?
等々、考察を得られることはたくさんあります。
また、この人は普段から私を応援していると言ってるけどTシャツは買ってくれないのね、とか面白がりながらチェックしています。

いつかは杉様

 最後の課題は売名と寄付を両立することです。
私は杉良太郎さんを尊敬しているんですけど、杉様の語録に

「ああ、偽善で売名ですよ。偽善のために今まで数十億を自腹で使ってきたんです。  私のことをそういうふうにおっしゃる方々もぜひ自腹で数十億出して名前を売ったらいいですよ。」  

というものがあるのですが、本当にかっこいいなあと思います。
私はスターでもないので、分を弁えてせっせと自分の売名のためのTシャツをこさえてそれを売って、もらった利益を寄付しようと決めたのです。

 こう考えたのは四月にあった熊本地震がきっかけでした。
熊本は私の後輩や友人のふるさとです。またお客様にも熊本出身や熊本在住の方もたくさんおります。熊本城も損壊があり、心がとても痛みました。
個人での寄付やふるさと納税などの手続はしましたが、ニューレディーとしてもできることがあるのでは。
そう考えたら、まず今年はニューレディーとして10万円寄付しようと考えました。
逆算すると300枚Tシャツを作らないと10万円の寄付は実現しないということで、実際に300枚作ったのです。

 私の販売力が弱いせいで半分くらいしか売れていないので、とりあえず半分の5万円を既に寄付しました。
残りのTシャツが売れたら残りの5万円を寄付したいと思います。

 トレーニングにも売名にもなるしくみなら、続けてみたいなと思っています。
ということでまだS・M・Lと売っておりますので、お店やイベントなどで見かけたらお声がけください。
ふふふ。

Text/肉乃小路ニクヨ

次回は <別れと終わりの受け入れ方 「父の葬式」で感じた新しいはじまり>です。
夏の終わりに痛切な寂しさを感じるのは、気温が低くなった寒さのせいだけではありません。社会的にもさまざまな変化が起こった今年上半期は、肉乃小路ニクヨさんにとっても終わりを強く意識する季節でした。特に人が亡くなるということは取り返せない喪失を生むもの。でも、そこから新たな出会いも探せるはずなのです。