孤独が教えてくれたこと

 そうして自分で自分を居てよしと思ってから、ゆっくり1年くらいかけてゲイコミュニティーに近づき、気が付いたら女装をし、学校に戻ったときには勝手に学内にゲイのためのサークルを立ち上げていました。
自分と同じようなゲイの大学生のためのクラブイベントも立ち上げていました。
嬉しいことにそのイベントは今も続いています。

 私は小さい頃から人は孤独だと思っていました。
そして、それはとても寂しいことだと思っていました。
自分のセクシャリティを受け容れられず、誰にも話せない時期が続いたせいもあります。
寂しくて、辛かったです。
孤独を選び、レールから外れて考えたのも、私が強かったからではなく、そうするしかその当時は方法がなかったからです。

 でも、私はレールを外れてみて気が付いたのです。
孤独だけど私は一人じゃない。
色々な人生があって、たとえ周りに理解者はいなくても、何処かに自分と響きあう友がいる。
私は本を読んで、雑誌を読んで、こんなにも頭を使って面白がって人生を生きている人がいるということに気づき、もう一度そういう人と共鳴し合う人間になりたいと思い、社会復帰しました。
父親の死も私にあらためて生を考えるきっかけをくれました。

 もしも貴方が孤独なら、それは悪いことではありません。
死を考えるなら、自分の好きな本や記事を見つけ、その人と共鳴したり、一緒に仕事ができるようになる自分を見つけてください。
その好きなことを語り合える友を見つけてください。
あなたは一人ではないということに気がつくはずです。

 孤独だけど一人じゃないって思えるだけで、人生は何倍にも味わい深くなります。
私はそう信じて、今日まで生きてきました。

 Text/肉乃小路ニクヨ

次回は<感動ポルノは誰が生む?スポーツにもチャリティにも涙を求める私たち>です。
毎夏恒例のように放送されているチャリティー番組。今年はそれにオリンピックでのメダル史上最多獲得も重なり、感動することが当たり前で清く美しいような風潮が感じられました。感動は悪くない、チャリティも悪くない、だけどそこに疑問を持ちたい。そんなお話です。