結婚してまだ1年も経たない女友達の家を訪ねて行ったときのことでした。彼女が出してくれたお茶を飲みつつ、わたしが持って行ったケーキを頬張りながらグダグダと昼下がりのおしゃべりを楽しんでいたところ、彼女は口を尖らせて言ったのです。
「キッチンのシンク下に収納してある、ボウルの間と間に、旦那のエロDVDが隠してあったんだけど、信じられる?」
わたしが反射的に「え! 信じられない!」と返した途端、彼女は味方を得たかとばかりに、「だよね! なんでエッチなビデオなんて観るのか、ちょっと信じられない。わたしがいるのに!」と勢いよくたたみかけてきましたが、ちょっと待って。
わたしが「信じられない」と言ったのは、よりによってシンク下のボウルの間なんていう、妻に見つかりやすいところに、わざわざエロDVDを隠していたことであって、あなたの旦那様がエロDVDを所持していたことではない。
夫婦になったからといって、必ずしもすべての性的な事柄を、夫婦で共有しなくてはならないわけではないし、そもそもそれは無理ではないでしょうか。だってセックスは、愛を確認する行為としてだけ存在しているわけではない。密かに抱いている、人様にはとても言えない欲望や、けしからん性癖を満たすための行為でもある。
もちろん、そういった欲望や性癖を叶えるべく、パートナーとコミュニケーションを取り合い、お互いに納得の上で性の深淵を冒険するのは、素敵なことだと思います。
しかし、必ずしもふたりの意向が合致するとも限らない。その場合に、人の身体を使ってするオナニーじみたセックスに付き合わされるよりは、ひとり追求してもらうほうが、ずっとマシではないでしょうか。
『夫にAV見てほしくない問題』の本音は?
しかし彼女はこう言うのです。「独身の頃ならばまだしも、結婚したのだから、自分の欲望などは捨て、家庭を築くことに邁進すべき」と。
「ひとり旅に費やす時間や金銭があれば、その分家庭を省みてほしいのと同じことで、アダルトビデオもしかり、同じく時間も金銭も費やすものなのだから、もう見るのは辞めてほしいし、そもそも、わたしという妻がいるのに、よその女を見てチンポを擦られるのも、いい気がしない」というのが彼女の主張なのです。
『夫にAV見てほしくない問題』の本音は、実はその主張の後半ではないかとも思うのですが、では彼女自身、自分の性のことをどう考えているのか。そこが気になって、話のついでに尋ねてみたところ、「セックスは、好きな人とふつうにすればいい。ムラムラしたらローターを使うこともあるけど、さっとイクだけ」。それで十分に事足りているから、性に執着する人の気持ちがさっぱりわからないという。
なるほど、そこでようやく理解しました。彼女は、性にさして執着も興味もないのです。だからこそ、こそこそと妻の目を盗んでエロDVDを見る夫の行動がさっぱり理解できないし、理解する筋合いもない。そして世の中にはわたしが思っているよりも、そういう女性は、多いのかもしれないとも。
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