弱者ぶることで、自分に都合のいい行動を取らせる

でも、それくらい彼は、ナイーブで傷つきやすかったのです。
ゆえに、わたしの行動で少しでも、「自分は粗雑に扱われている」と感じたときには、まず自分がいかにわたしを大切にし、尊重しているかを伝え、次にどれだけわたしが彼を無下に扱っているかを訴えてくる。

その言い分がどれだけ無茶苦茶で支離滅裂であっても、いつもうっすらとした罪悪感に囚われていたわたしは、まずは傷ついている彼の言い分を聞かなくてはいけないと信じて疑わなかった。

そういえば、「彼氏に殴られる」と言っていた女友達も、「ひとりでご飯を食べさせるのは(彼が)可哀想」と言っていました。夫婦やカップル間のモラハラというと、相手を見下した、横暴なふるまいを想像するけれど、自ら弱者の立場を取ることで、相手が自発的に自分にとって都合のいい行動を取るように仕向ける方法もある。

モラハラを受けている側からすると、相手から強者と見なされている以上、まさか自分がモラハラを受けているわけはないと思うのも当然のこと。だから、モラハラは受けている最中には、なかなか気が付かない。

だからこそ、「パートナーといるとしんどい」と度々考えることがある人は、モラハラを受けているかもしれない、と一度、疑ってみてもいいかもしれないと思うのです。
なぜならモラハラは、確実に心を疲弊させるし、その弊害が日常のふとしたときに、思いもよらない形で現れるから……来週に続く。

Text/大泉りか