若者が「クルマ」に乗る理由
SplitShire
わたしが育ったのは、東京23区の中でも一番端っこの、犬の散歩で5分も歩けばもうそこは隣県という境界の街でした。
たった数百メートルしか離れていないというのに、ボーダーの向こう側には、少し過激なカルチャーが花開いていて、「あっちでは、皮膚を切り裂いて500円玉を埋め込む『500円』っていうリンチが流行っている」なんて物騒な噂が囁かれていましたし、時には誇らしげに、ノーヘルで原チャリに跨ったヤンキー達が、わざわざ出張ってきては、街のメインストリートを「パラリラ パラリラ~」と陽気な騒音をまき散らしながら威嚇するかのように通り去っていくこともある。
地続きで、すぐそこにあるのに、「あっちの街」には、あからさまに「こちらの街」とは違った世界が広がっているように感じていました。
しかし、我々「こちら」の人間は「あちら」に行かなかったわけではありません。
都心に通うサラリーマンのベッドタウンとして、碁盤の目状に住宅地の広がったこちら側と違い、隣接した街は工場や畑が多かった。
それはイコール「夜になるとひとけがなくなる場所がたくさんある」ということで、実家住まいのために、自室ではセックスがしにくい我が町の若者は、週末になるとこぞって車に乗りこみ、その暗がりを目指したのです。
なんのためにって?
もちろん、カ―セックスをするためにですよ!
ドライブがてら隣町へと出向いてカーセックスをすること。
それはわたしの生まれた街では特殊性癖でも変態行為でもなんでもない、ごく普通のセックスのパターンのひとつだったのですが、ある時、友人女性が「彼氏とカーセックスをしたんだけど、最低!」とプンプンと怒っていることがありました。
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