大学に入って、まず最初にしたこと
高校を卒業したわたしは、どうでもいい女子大へと進学しました。「どうでもいい」なんていうと、同じ学校を卒業した人たちはもちろんのこと、学費を払ってくれた両親にも申し訳ないのですが、本当に、わりと、どうでもよかった。むしろ、出版社で働く父親の影響もあり、以前から出版の世界に興味を持っていたので、どこかの編集プロダクションか何かで働きたいと考えていたのですが、両親は大学への進学を進めてきました。
「勉強したいこともないのに、大学に行くなんてもったいない」そんなわたしの主張をひっくり返したのは、父親の一言でした。「大学を卒業すれば、嫌でも残りの人生、働き続けることになる。だったらその前に四年くらい、自由を満喫すればいいじゃないか」というのです。モラトリアムを許す、という宣言は、遊びたい盛りのわたしにとってありがたくもありました。そもそも、わたしが通っていた高校は進学校で、友人たちも皆、大学へと進学します。就職を目指すほうが珍しく、従って、より自分の意識をはっきりと持って動かなくてはならない。それを思うと億劫な気分になる一方で、「自由を満喫」という言葉が甘く聞こえてきます。というわけで、わたしが流されるまま、四年生の某女子大へと進学したのです。
今考えれば、「大学に通いながらライターを目指せばいいじゃない!」と思うのですが、当時はそんな方法があるとは知りませんでした。なので、大学に入って、まず最初にしたことといえば、キャバクラの面接に行くことでした。今までは法のぎりぎりグレーのところをかい潜って、わりのいい金稼ぎをしてきましたが、これから先は、堂々と高額アルバイトに勤しむことが出来る。これは、わたしにとってありがたい話でした。
というのも、別にわたしだって、好き好んで女子高生デートクラブに通ったり、オジサンを相手に春をひさいでいたわけではないのです。もちろん、デートクラブで「指名される」という快感や、シャワーを浴びているオジサンの財布から金を抜いて逃げるスリル、クラスメイトたちの知らないイケナイ世界を知っているという優越感を心地よく思うことはありましたけど、それよりもオジサンと歩いているところを人に見られるリスクや、金で買われた相手に股を開く憂鬱のほうがずっと大きかった。だから、正々堂々とキャバで働ける立場に達したことほど、喜ばしいことはないようにも思えました。
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