結婚してない「すれ違い」、結婚してる「すれ違い」
本作の男女は、結婚した後に破局をします。よって「何となく惚れてあなたと付き合ったけど、私はあなたと価値観合わないの!もうさよならよ!」なんていう軽々しい破局ではありません。
そこが何よりリアルで、本作の破局の原因もまさに皮肉そのもの。
男女片方だけ仕事で大出世して、片方は出世しないどころかスタート地点にも立ててないレベル。それがすれ違いを生んでいくのです。
「仕事と私どっちが大事なの!?」なんていう文句は、恋愛においてテンプレートのように存在していますが、「結婚すれば一緒に住めるし、仕事のサポートもできる」なんていうのが、いかにバカバカしく何も考えていないかを痛感させます。
ただしこれは「結婚したら家庭に入りたい。旦那を全身全霊で支えたい」と思っている人は問題ないです。その場合は、成功していく旦那を支えていくのみですからね。
本作が厄介でリアルなのは男女共に目指しているものがあること。結婚して仕事以外の時間を二人で過ごせたとしても、片方は大成功しているのに、かたやスランプ継続中であれば、もう劣等感しか感じないわけです。
しかも大成功側は、自分のパーティーを開催してしまうほど。パートナーとして出席することで、より劣等感を生む結果に…。
自らに置き換えたらこれは確かに辛いです。例えば、私の妻が小説家でベストセラー記念パーティーを催すとしましょう。
私が仮に、俳優志望でオーディションに落ちまくっている状況で「主人です」なんて紹介されても、「あー、はいはい、どうせ何も成功してない肩書だけ主人ですよーだ!」とか不貞腐れますね。
それをその場で出さずに大人な対応ができたとしても、内心はそう感じている人が多いと思うんです。
「恋愛って難しい」は様々なラブストーリーが示してきていますが、「成功と失敗の両面を抱えている夫婦生活って難しい」を本作は示してきます。