いつも畳の上でセックスをしていました
パエリアさん(愛知県)
エピソード:
元彼の話です。
イケメンで大企業勤め、10歳年上の彼は私にとって自慢の彼。わたしの自宅の近くの一軒家で一人暮らしをしていました。
デートはもっぱら彼の家で、いちゃいちゃ。もちろんセックスも彼の家。幸せだったけど、不満がひとつだけありました。それは、彼が絶対にベッドで抱いてくれないこと。
理由は、ベッドのスプリングが悪くなるから。そのため、いつもするのは和室の畳の上。布団もひかず、そのままです。
この状態が1年続き、
「わたしよりベッドの方が大事なのでは……?」
と思い、色々あってさよならしました。
騎乗位で膝を畳に擦りつけわたしの心も擦りきれる(パエリア)
うん、それは間違いなく、あなたよりベッドのほうが大事です。
正確に言うなら、あなたより自分の生活スタイルを守るほうが大事だったんでしょうね。
彼の気持ち、かなりわかるんですよ。独身生活が長くなると、自分の日常を充実させるためのアイテムが徐々に増えてきて「聖域」化してきます。ベッドだったり、ソファだったり、同じメーカーで買い揃えた調理器具だったり、オーディオセットだったり。
そういうものに囲まれた一人だけの時間が「ちゃんと生きるためのジンクス」みたいになっていくんですね。ライナスの毛布とは言わないまでも。
彼にとってのベッドは、ただのベッドじゃなくて、生活のルーティーンを守る祭具だったのでしょう。ひとりで眠る前に「あ、あのときのセックスのせいでスプリングがちょっとおかしくなってるな」と気になり始めたら、もう生活すべてのリズムが壊れてしまうかもしれないから。
そういう男と長く付き合うためには、「そのライフスタイルの隙間にちょうど入る都合のいい愛」か「そのライフスタイルに強引に割り込んでいく破壊的な愛」しかないです。おそらくその結果として彼は長いこと独身なんでしょう。
ま、お金ありそうなんだから、ホテルに行ったり、せめて毛布買ったりぐらいはしても良かったんじゃないの、って話ではあるけれど。
短歌、音数とか助詞とかをちょっと整えるともっとかっこよくなりそう。
騎乗位は畳で膝がすりきれる 愛もだんだんすりきれている
みたいに。まあお好みでご自分でいじってみて、ちょうどいいところを考えてみてください。そんなことをしているうちに、ベッドに負けた思い出も怨霊と一緒にどっかに飛んでくと思うよ。ひざの痛みもね。