イケメンは、イケメンじゃありませんでした
斗花さん(東京都)
エピソード:
バイト先の話です。
大学では冴えない女子大生でしたが、バイト先では経験も長いので比較的仕事もでき、深夜帯に働く女子が珍しいせいか「マドンナ」などと呼ばれ、後輩の高校生からあこがれられる存在でした。
あるとき、バイト先に別の大学の同い年の「イケメン」が入ってきました。
彼は同僚の女子高生をかたっぱしから食い散らかし、主婦や女性社員とも関係を持つ始末。
そして、その話をなぜか私には打ち明けてきました。
恋愛感情はまったく起きないものの「これこそが大学生のあるべき姿だ」と見せつけられ、みじめな気持ちになりました。
ところが、ある日、大学関係の友人がたまたま彼の知り合いであることが判明。友人は笑いながら「彼が大学ではどれだけ地味か」「どれだけダサいか」などを話してくれました。
どうやら大学内でのカーストは私より低いようでした。
食い散らかしの順番が私に回ってきたとき、彼がとても滑稽に思えてしまい、断りました。
私と同じ「バイト先だけでイケてる」人だと知らなければ、あの「イケメン」ともうまく恋愛関係を築けたのかな……と今でも考えてしまいます。
生きている世界はいつも同じでも結ばれないのはプライドのせい(斗花)
彼が大学では地味でダサい、というところも含めて「大学生のあるべき姿」だと思います。
環境を変えて「なりたい自分」「ほんとうの自分」の実現に成功したわけだから、自分の人生を前向きにコントロールしようと努力した、いい話ではないですか。周りにレッテル貼りされたキャラを続けなきゃいけない理由なんてまったくないです。
それを滑稽だとかみじめだとか感じるのだとしたら、「人は変わってはいけない」「他人に決められたイメージに合わせなければいけない」という抑圧にとらわれているということですね。それは、親なり先生なりに植え付けられてしまった、あなたの人生を邪魔する粗大ゴミみたいなものだから、早めに処分してすっきり大人になってくださいね。
まあでも、それより気になるのは「この話、どこまで真実なのだろう」というところ。
バイト先で片っ端から関係を持つなんて、ほんとにできるのかなあ。横のつながりがあるところで何人もの相手と寝るのって、とても難しいんです。人間関係を壊させず、新しい子を警戒させず、復讐もされないように立ちまわるのって、才能とマメさと忍耐力がそうとう必要。
恋愛上級者の諸姉兄の話でも「1つのコミュニティの中では付き合うのは1人と決めている」みたいな人が多い気がします。
気になるマドンナであるあなたに「自分はこれだけモテるんだ」と注目してほしいがために「あいつともあいつとも寝た」と嘘をついているモテない男の話と考えると、僕の中では腑に落ちるんだけど……。
まあ、真相は藪の中にしておいてあげるのが彼のためでもあるんでしょうね。若者にとっては恥ずかしい背伸びのための嘘ってパワーアップアイテムみたいなものですからね。どんどん自分の殻を剥いて、理想じゃない自分を過去に葬っていけばいい。
立ち止まってる人よりも何倍もかっこいいと思うよ。
はかなさも誰かの期待 ほんとうはひと月生きるセミの成虫