テレビ東京・佐久間Pの企画術!この人の面白さをわかってほしい
─番組制作の企画のつくり方についてお聞きしたいです。
企画をたてる中で自分自身の「面白い」と思う感覚はどの位の割合でいれて作りますか?
面白いかどうかをジャッジするために、何かと比較したりしているのでしょうか?
佐久間:作る番組のジャンルによって違います。たとえば情報番組を作るときは「視聴者にとって今興味があることか」、「視聴者が得に思うか」とかを大事にしています。
観た人が得に感じるものが情報番組なので。
でも、お笑い番組は視聴者が求めているというものを作るというよりも、「僕たちはこれが面白いと思うんですがどうですか?」と提示していく感じなので、企画の場では視聴者のことは全然考えないですね。
自分の面白いと思うことだけで作っています。
─「当てにいく」とかはないんですか?
佐久間:ないですね。「この人のここが面白いと思っているのは俺だけなのかな?」というところから、そのまま提示した方がいいのか、別の企画で見せた方が面白いのかを考えていきます。
とにかく「この人が面白いことを分かってほしいな」という気持ちで作っていますね。
─2015年1月2日に放送された『共感百景』、すごく面白かったです。トリプルファイヤーの吉田さん、清野とおるさんを始めとする人選に驚きました。
佐久間:出演者は編成とかにも教えなかったんです。
─お正月番組の枠としてはチャレンジ企画のように見えるのに、GOが出たのがすごいと思っていました。企画書の出し方に工夫などあったのでしょうか?
佐久間:『共感百景』は企画書を通すのに苦労しました。
もともとは、スラッシュパイルという制作会社のイベントだったんです。
スラッシュパイルのイベントは以前からよくテレビ化しているんですが。
第1回のイベントから面白かったので、すぐに作家さんに企画書にしてもらったんですが全然通らなくて。
なんとかして通したいと思って、企画書でイベントを再現することにしました。
出演者がお題に対して「あるあるネタ」を書いた“共感詩”の色紙の写真を全部もらってスキャンして。
企画書を1枚ずつめくると、読んだ人が笑えるようにしたら通ったんです。嬉しかったですね。
企画につまったら…
─企画に迷ったり、詰まったりしたときにやることはありますか?
佐久間:企画に迷ったときは本屋に行きます。
本屋に行って、普段は読まない恋愛小説や自己啓発本のランキングを見たりしているうちに、これをテレビと掛け合わせるとどうなるんだろう、と強制的にテレビ番組になるものを考えます。
そうすると、怒りを抑える本がたくさん出ていることに気づいたりするんですよ (笑)。
だったら、そういう番組を作ったら面白いかなと、刺激を受けます。
それから番組作りで悩んだら、一番最初に書いた企画書を引っ張り出してきます。
なんでこれを面白いと思って始めたのかを見ると、どこが魅力で、どこを面白く見せたかったのかが書いてあるので、立ち返るところがわかるんです。
─本屋でキーワードをたくさん拾うんですね。勉強になります。
企画を出していく中で観ておいて良かったと思う作品や、経験してよかったと思うことはありますか?
佐久間:ものすごくありますね。この仕事に関しては、面白くてもつまんなくても観ておいて損なものはないですね。
個人的には昔から演劇が好きで小さいお芝居も行って、そのときに面白いと思った人を引っ張り出してきたりします。
つまらなかったときも「なんでつまんなかったんだろう?あらすじは面白かったのに」と考えていくと、やってはいけないことがわかったりするので、失敗例を観るのも大事ですね。
─なるほど! 他にはどんな経験が企画のとっかかりになりますか?
佐久間:よく企画のきっかけになるのは違和感みたいなものですね。
「みんなゲラゲラ笑っているのになんで俺だけ面白くないんだろう」、「なんで嫌な気持ちなんだろう」、「テレビでみんな泣いているのに俺は泣かないんだろう」という違和感を突き詰めて考えると、「俺は感動ブームが嫌いなんだ。感動をありがとうって何だよ!」って気づいて番組を作ったり。
自分の違和感を取っておいて後で考えると番組になったりします。