祝ドラマ化!『逃げるは恥だが役に立つ』に見る心を閉じた男と武将のように策士な女

 少女マンガに登場するステキな王子様に胸をときめかせていたあの頃——いつか自分も恋をしたい。そんな風に思いながら、イイ男とは何か、どんなモテテクが効果的なのか、少女マンガを使ってお勉強していたという人も少なくないハズ。

 時は流れ大人になっても、少女マンガによって植え付けられた恋愛観や理想の王子様像は、そう簡単に劣化するものではありません。 むしろ王子様の亡霊に取り憑かれて、リアルな恋愛がしょぼく思える人もいたり?

 この連載では、新旧さまざまなマンガを読みながら、少女マンガにおける王子様像について考えていきます。

第6回:閉じてる王子様『逃げるは恥だが役に立つ』

『逃げるは恥だが役に立つ』(以下『逃げ恥』)は、就活に失敗し、派遣会社に登録するも派遣切りに遭ってしまった25歳の「みくり」が主人公。無職になった彼女は、父親の元部下である「津崎」のマンションで家事代行のバイトをはじめ、やがてお互いの利益のため“契約”結婚しますが、さまざまなハードルが待ち受けていて…というお話です。

 みくりたちの結婚は家事労働にお給料が支払われるシステムなので、女子のお仕事マンガとして読むのもおもしろいですし、はじめは形だけの結婚だったつもりが、お互い相手のことが気になっていく展開を、恋愛マンガとして読むのも当然おもしろい。つまり、1粒で2度美味しい作品です。

雇用主としては魅力的な「独身のプロ」

 津崎は神経質なメガネ男子で、ひとことで言うと「理性の人」。みくりとの契約結婚に踏み切ったのは、その方がメリットがあると計算したからですし、同居生活がスタートしてからも、なるべく働きやすい環境をみくりに提供しようと頭を使います。とにかく合理的でムダがない。ちょっと冷たそうだけど、このひとが雇用主だったら仕事やりやすいだろうなあ、という感じがします。

 しかし、ひとりの男子としては、恋愛経験に乏しく、それゆえ女性に対して奥手。「独身のプロ」を自称し、諦めモードに入っています。というか、恋愛だけでなく、人間関係全般が苦手そう。ふだんから無口で、自分から誰かに接近し、打ち解けようとする様子が見られません。メガネの奥の瞳がなかなか見えないので感情が読めないですし、世界に対して壁を作ってる感じがある、ありすぎる。

 他者とかかわることをストレスの素と捉え、避けようとする津崎の人生は、ムダがないと言えなくもありませんが、どこか味気ないですし、人間関係の厄介ごとを引き受けられないことを、子どもっぽいと受け取られる可能性もはらんでいます。