“女子”の処方箋はディティールにあり 『ダメをみがく ―“女子”の呪いを解く方法』 津村記久子 深澤真紀 紀伊國屋書店
「共感」の力。
男性にとってのロジックと対比的に使われるキーワードであり、そのまま女性の長所を表すことばでもありますよね。
でも哀しいかな、その力があまりに行き過ぎると、とたんに「相互監視」「同調圧力」という名の呪いに化けてしまうことがある――。
本書はそうした呪いをできるだけ省エネでやりすごし、健全に生き延びるための工夫をユーモアたっぷりに説いた対談集です。
同性によるパワハラで会社を辞めた経歴を持つ芥川賞作家の津村記久子さんと、150社以上もの就職&転職活動を経験した編集者・コラムニストの深澤真紀さん。
彼女たちが家族や同僚、友人関係の中にある相互監視や同調圧力の苦しみをくぐり抜けて得た処方箋は、「共感を求めない」こと。
楽しい時間を共有するのはおおいに結構だけれど、感想や価値観、ましてや生き方まで共有する必要なんかまったくない――男文化だけでなく「女子力」の中にも別種のマチズモが存在することを冷静に見抜き、適度に切り分けて考えることの大切さをわかりやすい喩えで教えてくれます。
たとえば、「(あなたは)子どもがいないからわからない」という、これまたよくある呪いにはどう切り返すか?――津村さんの答えは「マザーテレサとか子供おらんかったで」!(笑)。
強権的なスローガンなどではなく、ささやかなディティールによってこそ救われる部分が確かにあるということ。
これもまた“女子語り”の効能の特徴でしょう。