時間差でトイレに立つ男女は「マジでデキる5分前」。大規模飲み会での作法/中川淳一郎

大人数が座敷に集う飲み会では、隣や向かいに座る相手を選べないもの。だからこそ、最低一度は過去に会い、「若干の好意を持った相手」が遠くにいると、お互いに残念な気持ちになる。そして飲み会の最初の1時間、3回ぐらい目が合い、頭を下げ合ったり、クスリと笑うのだ。そして、「あなたの隣だったら良かったのですが」の念を送る。

席替えでこちらに来るパターン

そんな飲み会をこれまで何度も経験したが、その内の数回はその先のアクションがあった。なんとなくの席替えタイムでこちらに来るパターンがまず一つ。この手の大規模飲み会は2時間で終了し、その後は人数が多いだけに二次会は各自気の合った者同士で、といったことになる。そうした雰囲気になると、我々はこのような会話をする。

「終わったらどうせ店の前で皆さんダベるでしょうから、その間に『私先行きまーす』と互いに言い、別方向に歩き、交差点のところの2階にあるバー『S』で待ち合せんか?」

「ニノミヤさん、了解です!」

かくして我々はこの日の大規模飲み会に関する愚痴、果てには参加者やこの仕事に関する愚痴などを話し、この日はお別れとなる。こういった時はさすがに「今からホテル行きませんか?」とはならない。あくまでも「最初からサシ飲みの日程を決める」ということになるのだ。そうして、実際にサシ飲みになるとそのままHOTELへGO!ということになるパターンもある。

時間差でトイレに立つパターン

そして、大規模飲み会におけるもう一つのパターンが、若干酔っ払い同士のご乱交的になるのだが、時々目を合わせる彼女がニッコリと笑いかけてくるのである。僕もその笑いに込められた意思はすぐに分かる。

つまり、「私がトイレに立ったら、その後を追いかけてきてね」ということなのだ。そのサインも何度も経験したことがある。こうしたサインは女性から出した方がいい。男が出すと、相手が自分に好意を持っていると誤解し、笑いを仕掛けても相手の本心と違うことが多々ある。何しろ男は鈍感なのだ。彼女にとっては「気持ち悪い笑いをされ続け、私は飲み会の時間中ずっとセクハラに遭った」と感じてしまう。

かくして彼女が席を立った約1分後、僕もトイレに向かう。女性の方が便所は長いため、このような時間差が必要なのだ。そして、女性が先に席を立つ理由もこれが理由だ。男が彼女より早く戻ってこないと「あいつ、寝てるんじゃねーか?」「アイツ、ゲロ吐いてるんじゃねーか」となり、心配する人が見にきてしまうのだ。

だからこそ、女→男の順番でトイレに行くと同タイミングでトイレから出ることができて「あらっ!」「おぉ!」という茶番を展開することができるようになる。廊下では偶然出会ったかのように会話をし、実際は「後で隣にいらっしゃいませんか?」「この後2人でバッくれませんか?」みたいな話にもなりがちである。