喧嘩して家を飛び出して仲直り。でもそれはせーので未来を諦めることだ/長井短

あけましておめでとうございますって言うにはちょっと遅すぎるけど、それでもあけましておめでとうございます!今年もいっぱい書いて、同じ穴には落ちないように生きていこうと思っています。ついに今年で30歳で、嬉しすぎるなって気持ちと、もうマジでガキのふりはしてられないという緊張感…。大人の女が何かはわからないけど、逃げない女になりたくて、毛細血管切ってでも目を背けずにやってきたい。ので!逃げて逃げて逃げまくってた頃の私にまずは、さよならありがともうマジでバイバーイ☆

六太郎の家で喧嘩になったのは、遮光カーテンの隙間からオレンジになる前の白い朝日が差し込んだ時だった。何で喧嘩になったのかは覚えていない。ぼんやりだった雑談のテンポが少しずつ上がっていって、気付いたら♪=150。熱を帯びたやりとりは、どこでどう絡まっていったのか。「なんで」とか「それが嫌なの」とか言った後、私はとうとう禁じ手を使う。「もういい」と言って家を飛び出したのだ。始発も出てない時間だし、荷物は全部六太郎の家にある。遠くの方で「ないわ〜」っていう自分の声を聞きながら、でも身体は止まらなかった。

お財布も持ってないし携帯もない。どこにも行けないから仕方なく、近所のベンチに腰掛けた。一人でそこに座ってみると、朝特有の新鮮な空気が私を浄化し始める。一番風呂に入ったみたいな気持ちよさだった。そうしてそこにただただ座り続ける。時々、ウォーキングするおじさんがそばを通る。人の気配がするたびに、六太郎かと思って少し顔を顰めてみている自分に気づいて情けなかった。六太郎は優しい人で、私よりずっと大人だった。だから彼は、きちんと私を迎えに来てくれる。「危ないよ」とか声をかけられて、私もめちゃくちゃそう思うし、てか寒いし、とっとと家に帰りたいけど、一応こういうシチュエーションだからごねる。

「落ち着きたいから。もうちょっと座ってる」
「いや、帰ろうよ」
「やだ」
「もうわかりましたから。戻ろう」
「…戻るからこっちのタイミングで」
「コーヒいる?」
「それはいる」
「はいはい」

缶コーヒーを飲んで家に帰る。不味くて少し笑ってしまう。やっぱり家のコーヒーが良くて、飲み直そうと家に帰ると、もう台風は過ぎ去ってて、私たちは仲良く一つのベッドで眠った。それは、とても良い思い出。本当に大切な思い出であり、大逃げの記憶だ。