愛の国パリで起こった悲劇
愛の国フランス、そして愛の街パリで悲劇が起きてしまいました。
事件から日がたつにつれ、直接の知り合いに被害者はいないものの、知り合いの知り合いには多くの被害者がいることがわかってきました。
被害が大きかったのは、私がちょっと前まで住んでいたパリ東部の下町です。よく知っている通りの、よく知っているカフェでの出来事に何をどう感じたら良いのかわかりません。数えきれないくらい、悲劇のあったカフェやレストランの前を歩いたことがあります。
テロの現場に足を運んでみると、数えきれないほどの献花に混じって被害者の方々の写真や、彼らに向けたメッセージが無数に供えられていました。
あまりに身近な場所だったので、そこに私や旦那の写真が置かれていてもおかしくないと思いました。たまたま、私たち夫婦は被害にあわなかっただけなのです。
運悪く被害にあってしまった人たちは、愛すべき人や家族を残してパリを去ってしまいました。
新聞などのニュースや、人づてでの話では、あの悲劇の中でも生き残った人たちのインタビューや現状も伝わってきます。
中には、バタクラン劇場で撃たれたボーイフレンドと共に、その場に倒れて死んだフリをして行き逃れたカップル。夫婦で被害にあったものの、夫の方だけ一命をとりとめ、奥さんの死についてはまだ知らされていないまま治療中である男性の話も聞きました。
どれだけその彼がこれから辛い思いをして生きて行くか想像もできません。悲しいけれど、私たちの毎日はやってきます。一週間が経ち、警備が厳しくなったパリの街で、パリジャンたちはこれまで通り生活をはじめています。
日々、色々と旦那さんに不満を感じることもあったりするけれど、今は、ただ、生きていてくれただけで感謝する気持ちでいっぱいです。
被害にあってしまった方々にも、身代わりになってもらったような申し訳なさを感じていますが、彼らの分まで日々、幸せと感謝をかみしめていつも通り生きたい。それがテロへのリベンジになると、私は思っています。
そう思っているのは多くのパリジャンも同じです。
もうすぐやってくるクリスマスは、家族が集まる年に一度の一大イベントです。多くの人にとって、家族一緒にいられることが特別に感じられる日になりそうです。
Text/中村綾花