どうしたら大切にしてくれる相手に
出会えるか

会った3人の中でも、ひときわ頑張ってくれる男性がいた。

私は、どうしたら大切にしてくれる人と出会えるか考えた末に、「スカイツリーでやっているエヴァンゲリオン展に行きたい」とプロフィールで主張することにした。

スカイツリーはもろデートスポットだし、軽く飲みに行ってホテルに直行したい性欲オバケみたいな輩は絶対に食いつかない。必殺、クズ除けの術である。仰々しく書いたけれど、自分の精神衛生を保つ上で一番大事だと思う。

しかも、スカイツリーなんてそう何度も行く場所じゃないから、先手必勝。一番に誘ってくれる人は、私を誘いたい人は他にもいるかもしれない、と焦ってくれるような人だろう。それはつまり、私を会う前から魅力的だと思ってくれていて、自分のものにするべく動く男らしい狩猟本能も備わっているということだ。最高である。

これは持論だが、結局の所、私という存在の価値を私以上に見出してくれる人と出会えると、5万%幸せになれる。

そして、実際に頑張ってくれたその男性はというと、エヴァンゲリオンを観たことがなかった。にもかかわらず、これまでに公開された映画を3本と、5時間に及ぶ解説動画を1週間の間に観てくれた。これはもはやオタクスピリッツを感じる所業だ。 
後日分かっていくことだが、彼は私が気にもとめないセリフやシーンの違和感を見つけてはいちいち30分は語ってくるいわゆる考察厨であった。オタクスピリッツがある一般男性ではない。普通にヲタクだったのだ。

ついに訪れた彼との初対面は、なぜかとても緊張した。行きの電車の中で「え、あの人かな?あの人だったらどうしよう!?」とドキドキしていたら、全くの別人だった。
改札の外で相手が待っていることを知っている時、ホームから改札を出るまでの数分は何か違う世界線への国境をまたぐ重大なシーンのように映る。

チェックコートを着た彼を見つけ、近づくとしっかりと目を見ながら「初めまして。〇〇です」と律儀すぎる自己紹介を受けた。それに対し、初対面に焦る私は「ちょっと遅れちゃってすいません!!行きましょう!こっちでしたっけ??!」と早口に畳み掛けてすぐに歩きだしてしまった。

大人の女の余裕があれば、「初めまして、セイナです。素敵なコートですね」とか言えたはずである。焦るとすべての挙動が小刻みに、せわしなくなる癖をやめたい。

この初対面の日を振り返ると、この時にはもう、「元カレに見せつけるための新しい彼氏候補」、なんてことはほぼ頭になかった。全くなくなったわけではないけれど、気になる人ができるとそんなことを考えている暇がない。

次会える約束があってもLINEの返信が6時間以上空くと不安になった。夜は上の空になることが増えたし、先週まで気にもとめなかった産毛が気になりだす。カバンの底に溜まったレシートも、ポケットティッシュの袋の一番上にしまい込まれた使用済みティッシュもゴミ箱送りにした。 

Tinderで出会った「新しい彼氏候補」は、また会いたい人に変わった。後ろばかり振り返って睨んでいた私も、自然と前を見るようになり、親友に見られたら「キモいよ」と言われるようなにんまり顔になっていく。

Tinderから、純愛が始まるかもしれない。

Text/セイナ

セイナ
恋愛姉さんカカ姉妹という二人組でYouTube、TikTokを中心に活動するクリエイター。新卒からフリーランス。KADOKAWA出版『彼氏の隣で落ち着けない』表紙を務めたことがきっかけで独立。典型的なAB型。
TikTok:恋愛姉さんカカ姉妹