全世代の女性に「尊厳を大切にしよう」と伝えていきたい

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――最後に、お悩み相談に回答する上で、大切にしていることやコツなどあれば教えてほしいです。

コツですか……。もちろんできる限り相談者さんのことを想像して書いていますが、相談を受ける側はとしては選択肢を提示するくらいで、わたしが言ったことが全てじゃないし、正解は出せません。性格によって向き不向きもありますからね。

紫原

お悩み相談って、意外とその人が書いてないところに悩みの種があるように感じます。ご本人が「こんな悩みがあります」と書いてくださってても、客観的に見るとどうにもそこじゃないところに種がありそうなときって少なくないのです。そういうときは、相談者さんが決して耳を塞ぎたくならないように、解決のいとぐちを本人に伝えなきゃいけないと思うので、塩梅が難しいです。

紫原さんはいつも事実を提示するだけじゃなくて、相談者の方の感情を因数分解して、「本当の貴方はこんなに優しい方ですよね」ってきちんと伝えてあげていますよね。相談者さん自身の短所や悪いところがあっても、捉え方によっては長所だったりするから、そこもしっかり見てあげないといけないなと勉強になりました。

紫原

愛さんは飴と鞭の使い方が上手で、回答に優しさと厳しさが両立していますよね。僭越ながら、愛さんの中に「貴方が自分を大切にできる楽な生き方を探した方が良いんじゃない?」という気持ちがいつも根っこにあるんだろうなと思いながら、本を読ませていただきました。

自分のために責任を持って、楽しく過ごして欲しいなって思うんですよね。例えば女性の働き方についてなど様々な問題に対して現実を変えていこうという努力は必要だけど、今すぐには変わらないことが世の中にはたくさんあるじゃないですか。わたしは相談者の方の人生を背負えないし、そもそもアドバイスが間違っているかもしれない。結局は本人が決断するしかないからせめて「自分を大切にできる楽な方法で」「辛いなら逃げ出しても大丈夫」と伝えたい。それが紫原さんに伝わって嬉しいです。

――紫原さんは世代が上の方からの相談を受けることが多いですか?

紫原

そうですね。年配の方や主婦の方からのお悩みは本当に深刻で……。新しいマインドの提示や陳腐な言葉遊びだけではどうしようもないんですよ。生活に関わるから具体的なアドバイスが必要で、とても難しいです。以前、60代女性からの<職場で年下からパワハラを受けています>という藁をもすがる思いに私もどうにかしてあげたくて、悩みに悩みましたね。

モラハラとかパワハラする側が一番悪いのに! その時はどのように答えたんですか?

紫原

「仕事を辞めたらいいじゃないですか」とは簡単に言えないじゃないですか。その方がどこに住んでいて、どんな経済状況にあるのかも分からないので。だから「もしも職場を変えられないなら、厳しく指摘された時に、堂々と『わ〜知らなかった!ありがとうございます!』って喜んで返してみたらどうですか」と。「こちらが傷つけば相手は喜ぶし、自分の立場が下になってしまう。けれど、相手のどんな言葉も自分の糧にする、その素振りを見せることで、実は相手にマウンティングできるんですよ」って。

環境を変えることはできなくても尊厳を踏みにじられない方法を取ることができる、そうおっしゃっているように感じました。

紫原

そうなんです。例えば、家庭の中で夫からモラハラを受けている妻って決して少なくないのです。にも関わらず、子どものことや生活のことを考えると簡単に離婚できない。そんなときでも、自分がモラハラを受けて当然だと思って生きるのと、これは間違っていることだ、いつかここを出て行ってやる、と思いながら生きるのとでは、自分のコアな部分の傷つき方が全く違うし、将来も変わってくる。環境を変えられようが変えられまいが、「自分の尊厳を傷つけてくるやつから自分を守り抜こう」っていうことを一番伝えたいと思ってやってます。
愛さんも20代に向けて同じことをやっているんだろうなと感じました。きっと地続きになっているはずだから、一緒に頑張っていきたいな。

わたしが10〜20代のうちに「尊厳を大切にしよう」と促して、掬い上げられなかったところを紫原さんにお願いしたいです!

紫原

じゃあ、お互いに頑張っていきましょう。ベルトコンベアみたいにね!(笑)

TEXT/苫とり子

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