誰にも言えず我慢する男性たち

ぼくたちの離婚イベントレポート
稲田

この本に出てくるのは「都心型・高偏差値・文化系・ホワイトカラー」みたいな男性たちが多い。そういう男性たちの離婚の理由って、男側のDVや借金、犯罪によるものじゃないんですよ。例えば、エピソード03の橋本亮太(仮名)さんなんかは「家族が得意じゃない」という理由で離婚しているんです。それって我々の親世代からしてみれば、信じられないような理由じゃないですか。

宮崎

僕も男だとか女だとか、日本人だなんだかとかそういうものに囚われずに自由に生きるのが良いというリベラル教育を受けてきたので、25歳の時に彼女と同棲と同時に結婚したんですけど、いきなり「今日から夫です」という風にはなれませんでした。

当時勤めていた会社をいずれ辞めて、もっと小さい尖った会社に入って、そこからフリーランスになるという計画があって…。でも、一方で妻は安定した生活をしたいと考えていたから、そこらへんもネックになっていました。だから話し合いの末、僕が30歳の時に離婚したんです。

稲田

逆に、保守的な家庭で育った男性でも離婚に至るパターンがあるんですよ。保守的な団塊世代を体現したような、お父さんが大黒柱、お母さんが専業主義の核家族はその典型。夫婦のロールモデルは大抵において両親ですから、「家庭は夫婦円満、妻を養い、男は経済的にも精神的にも大黒柱にならなければならない」と幼い頃からインプットされる。

一方で、世の中の価値観はここ20年ほどで大きく変わり、共働きが当たり前になった。にもかかわらず、そういった男性たちは昭和的な家庭の形が頭から離れず、どんなに家庭生活で理不尽なことが起きても、「俺が大黒柱として家庭を守らないと」と、極限まで我慢してしまうんですよ。

もちろん、我慢できるくらいのキャパシティが男性にあればいいんです。でも、「都市型・高偏差値・文化系・ホワイトカラー」の男性に昭和的な頑強さはありません。脆弱なメンタルなのに、両親をロールモデルにしているから、無理して大黒柱みたいに振る舞って、いずれ破綻してジ・エンドになるんですよね。

宮崎

おそらく、それは結婚自体が制度疲労していることが問題ではないかと僕は思います。