漫画家の清野とおると壇蜜、オードリー若林、メイプル超合金の安藤なつ…多くの著名人が結婚を発表し、世間を賑わせた2019年の“いい夫婦の日”。そんなおめでたい日の前日、結婚とは逆に離婚した男性のエピソードを集めたルポルタージュ『ぼくたちの離婚』の刊行記念イベントが下北沢B&Bにて開催されました。
「ぼくたちは『いい夫婦の日』をどんなメンタルで迎えればよいのか」と題したイベントには、著者の稲田豊史さんとフリーライターの宮崎智之さんが登壇。『ぼくたちの離婚』に収録されているエピソードや、結婚制度の問題点、離婚にまつわるカルチャー作品について語りました。
以下、当日の模様をレポートします!
『ぼくたちの離婚』は離婚について語れない男性たちの声を掬い取った本
著者の稲田さんは、自身も離婚経験者。離婚した男性たちにインタビューをし始めたのは、仲間内で集まって離婚について語る「バツイチ会」という飲み会がきっかけだといいます。
- 宮崎
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僕も稲田さんと同じ「バツイチ会」のメンバーです(笑)。やっぱり、男性が遠慮なくバツ話を話せる場って、なかなか存在しないんですよね。
- 稲田
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男性が自分の離婚について語ると、たいてい世間から責められるんですよ。基本、男性が加害者という構図だから。本書の中にも、妻から相当酷いモラハラを受けた夫のケースが出てきますが、夫は「妻のせいで離婚する羽目になった」とは、長い間、人に言えなかった。自分が責められるからです。WEBでこのエピソードを公開した時も、“妻が病んだのは、お前のせいなんじゃないか”とか、“そういう妻を選んだのはお前なんだから、最後まで責任を持って添い遂げろ”という自己責任論コメントが相次いで……。自分のことじゃないのに、泣きそうになりました。
- 宮崎
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結婚は基本的に互いの同意に基づいてなされるものだし、ほとんどのケースは、一方だけが極端に悪いとは言えないはずです。でも、なぜか男性の方に責任が負わせられがちだし、その圧によって男性は口をつぐんでしまうんですよね。あと、これはなにも「外圧」だけではなくて、男性自身が「自分が男として一人前ではなかったせいなのではないか」と、古い男性観の呪縛にとらわれてしまっている、という側面もあると思います。
妻からのモラハラや、妻の実家で牛が飼われていたことが離婚の原因になったとか、極端な例も含めて、『ぼくたちの離婚』は語れない部分を掬い取った本。多分、稲田さんの目指すところは、そういうものも含めて声を挙げられて、喋れる人が周りにいるような環境を男性も持ってほしいということだと、僕は読み取りました。
- 稲田
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女性の読者はSNS のコメント欄など、他の人にも可視化される場所で意見を言ってくれるんですけど、男性読者からはだいたい僕宛てへのダイレクトメッセージで意見が来るんです。男性が公の場所で“このエピソードに登場する人の気持ちが分かりました!”なんて言うと、“へえ、お前はそうなんだ”と、いろんなことを品定めされますし、なんなら責められますからね。だから男性が公の場所で感想を言ってくれる時は、“ホラーですね”など、実にフワッとした表現です(笑)。本当はもっと“エピソード11の北条耕平(仮名)ってこうだよね”とか具体的に言って欲しいんですけどね。
- 宮崎
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『ぼくたちの離婚』のAmazonレビューでも女性から「この本は彼氏には読ませてはならない」という意見がありました。やっぱり、男性が離婚に関してペラペラ喋ったりするのを良しとしない空気があるんじゃないかなと思います。