「青の街」の裏(?)の顔
まだコロナウイルスの「コ」の字も聞こえなかった数年前、世界中のインスタグラマーたちが競って訪れていたとある街を、私もまた訪れていた。モロッコにある通称「青の街」、シャウエンである。なんかウインナーみたいな名前だけど(それはシャウ◯ッセン)、ウインナーとはもちろん何の関係もない。
「シャウエン」で検索するとおそらく、ちょっとため息が出るような美しい写真がPCやスマホにたくさん表示されるはずだ。家の外壁や塀や扉がとにかく青、青、青で、街全体が青で埋め尽くされている。なぜ外壁などを青く塗って統一しているのかは諸説あるらしく詳しいことはわからないんだけど、とにかくインスタ映え必至の人気旅行先がシャウエンなのだ。
しかしそんなシャウエン、実は裏の顔(?)がないこともない。世にも美しいこのインスタ映えスポットは、実は旅行者の間では「マリファナ天国」と囁かれていたりする。流通しているのは、主に大麻樹脂である「ハシシ」。もちろんモロッコでも大麻の所持・生産は違法なので手を出してはいけないのだけど、すごくカジュアルに「ハシシあるよ〜」と声をかけられるので、けっこうびっくりする。イスラム教の国では飲酒が推奨されていないので、そのぶん大麻とかが流通しやすいのかもしれない。
佐久間裕美子さんの『真面目にマリファナの話をしよう』を読んで、まずはそんな、自分の中のマリファナ接近体験(?)を思い出した私であった……シャウエン自体は美しくてとてもいい街です、山奥なので冬に行くと超寒いけど。
マリファナと人種差別の歴史
そんな思い出話はいいとして、『真面目にマリファナの話をしよう』は、著者の佐久間裕美子さんがアメリカにおけるマリファナ合法化の流れを追ったルポルタージュである。日本ではもちろん大麻の所持は違法だけど、アメリカではコロラド州が、2014年に嗜好目的のマリファナ使用を合法化している。
嗜好目的はともかく、医療の世界ではすでに、マリファナがPTSD、緑内障、睡眠障害などの治療や防止に効果があることが認められているらしい。いろいろな意見があるだろうけど、合法化に向けて真摯な取り組みを行っている人たちの活動を追っていると、日本でも少なくとも医療目的のマリファナは合法化して、処方箋薬局などで安全に手に入るようになればいいのになあと個人的には思う。
私が「へえー!」となったのは、マリファナがなぜ危険ドラッグとされ、タブー視されるようになったのかというその歴史だ。なんでも、かつて麻薬局の局長に任命されたハリー・アンスリンガーという人物が、1933年に禁酒法が撤廃されたあと「マリファナは人を発狂させる」「黒人たちがマリファナをやっている」とネガティブキャンペーンを実施し、非合法化に尽力したらしい。そのため、人種差別の歴史を思い起こさせる「マリファナ」という呼び名ではなく、「カンナビス」という呼び名を使うべきだとする主張もあるそうだ。
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