自分だけの、自分を大切にするやり方

そして最後に気がついたのは、『自分を大事にする』とは、わたしにとっては演出家が『女優』にするように自分のことを扱うことだ、ということだ。

『女優』に当たる部分は人によって違うだろう。ある人にとっては手痛い別れ方をした昔の恋人かもしれないし、疎遠になってしまった友人かもしれない。家族かもしれないし、職場の上司や、部下かもしれない。なんでもいいし、誰でもいい。

とにかく、自分のことは二の次で、心を尽くしてケアをした。そんな人物にしてやったことを、自分に対してもやってやるのだ。なぜならそれこそが、本当に自分がされて嬉しいこと———自分自身を大事にするやり方だから。

そう気がついてから、わたしは自分を人生の主演女優として扱い始めた。体をいたわってやった。美しい部屋を用意して、いちばんきれい見える衣裳を選んでやった。メイクにたっぷり時間をかけてやった。集中すべきこと以外に集中しないで良いように、いくつかの仕事を猛スピードでこなし、いくつかの仕事は断った。泣きたいときに泣かせてやった。泣き終わったら、はげました。そして信用してやった———何があっても君は絶対大丈夫、と。

これらのことすべてを、わたしは去ってしまった女優にできたわけではない。できなかったことのほうが多い気がする。だけど後悔も自己嫌悪もすべてを飲み込んで、彼女を思い出した。してあげられたことも、してあげられなかったことも、ぜんぶ自分自身にしてやると決意した。そうしてしばらくが経った。ある日こみ上げてきたのは、深い許しの気持ちだった。

わたしうまくいかなかった、でも、確かに愛してた———。

こんなふうに少しずつ、自分のことを許していく。許すことで知っていく。自分だけの、自分を大切にするやり方。重ねた失敗がいつのまにか、懐中電灯になっている。人生という暗い森を照らす、まっすぐな灯りに。それは次第に道をつくり、道はやがて舞台になる。まっすぐなランウェイになってゆく。だから心配しないで、歩き続けて。わたしは君を見捨てない。何度転んでも大丈夫。なぜなら、君はヒロインなのだから。

Text/葭本未織

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