男性のもとを立ち去ると……

最初からSM系のパーティーにM女として呼ばれたわけでもないのに、なぜわたしだけ部屋の隅にポツンと追いやられて、ひたすら陰湿な雑言を受けているのか。いくらお金をもらっているといっても、何をされてもいいわけではない。そう思い、その男性のもとをすっと離れると、「えっ、なんで行っちゃうの!?」という言葉が追いかけてきました。「あっ、一応は対話もできるんだ」と驚きつつも、「あの人、ひたすら独り言で言葉責めしてきて、嫌なんですけど」と主催者に申告したところ、無事に引き離してもらうことに成功したのでした。

お金をもらって参加していた以上、あの独り言を引き受けるべきだったのかもしれないとも思うし、いくらお金をもらっていたとしても、そこまでは含まれていないとも思う。道端の老人に明るく「赤信号、長いですね~!」と同意を示せば、ささくれだった彼の気持ちを少し緩めることができたかもしれないけれど、通りすがりのわたしが、見ず知らずの癇癪爺をケアする必要なんてないとも思う。「人に優しくしたほうがいい」という気持ちと「自分をすり減らしてまで優しくなんてできない」という本音を露わにする独り言、恐るべし……(と独りごちる)。

Text/大泉りか